トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.13(2025年4月9日-4月15日)

防衛関連調達の近代化と防衛産業基盤におけるイノベーションを創発するための大統領令
アメリカの海洋覇権を取り戻すための大統領令
トランプ政権トラッカーの一覧(2025年1月20日~)
【一覧】トランプ政権トラッカー(大統領令・布告・覚書・発表)
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大統領令一覧

連邦政府の行政施設管理に常識を取り戻すための大統領令(4月15日)

この大統領令は、連邦政府機関がオフィス・施設を設置する際の既存の規則を撤廃するものである。具体的には、可能な限りビジネス街や歴史的建造物を優先するよう命じる従来の規定を撤廃し、費用対効果の高い施設・立地の選定が可能になるとしている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

加工済み重要鉱物およびその派生製品に対する通商拡大法第232条措置を通じた国家安全保障と経済強靱性を確保する大統領令(4月15日)

この大統領令は、加工済重要鉱物および、それらを原材料として含む派生製品(完成品を含む)の輸入に関し、国家安全保障上のリスクについて調査を行うよう命じるものである。具体的には、これらの資源・製品に関して、サプライチェーンの脆弱性や供給国のリスク評価が実施され、国内生産の強化、依存度の低減、関税措置の導入などに関する提言が行われる。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

改めてアメリカ国民第一を掲げ、薬価を下げることを命じる大統領令(4月15日)

この大統領令は、保健福祉省を中心に薬価を引き下げる措置を取るよう指示するものである。具体的には、バイデン政権時代に始まったメディケア薬価交渉プログラムの効率化、メディケア・メディケイドに基づく支払いの適正化、許認可の推進等による高額医薬品分野の競争促進、処方薬の輸入増加による価格抑制その他が挙げられている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

連邦政府による調達に常識を取り戻すための大統領令(4月15日)

この大統領令は、連邦調達規則(FAR)の肥大化と複雑化に対処し、連邦政府との取引に伴うコストと負担を軽減することを目的としている。具体的には、FARには不可欠な規則のみを残す形で簡素化を進めるとともに、各政府機関の調達規則もこれに準拠させるよう求めている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

相互関税一部停止:貿易相手国による報復や協調姿勢を反映して、相互関税率の調整を命じる大統領令(4月9日)

この大統領令は、相互関税に対する各国の対応姿勢に応じて、適用される関税率を調整するものである。まず、中国以外の国に関しては、各国の貿易慣行に応じた個別の追加関税を7月9日まで一時停止し、その間は一律で基本関税率10%のみが適用される。一方、中国に対しては、関税率表(HTSUS)上の税率を84%から125%へ引き上げるとともに、少額輸入品にかかる関税率も90%から120%へと引き上げられる。郵便物に関しては、課税最低額が6月1日までは75ドルから100ドルに、6月1日以降は150ドルから200ドルに引き上げられる。(大統領令はこちら

サスマン・ゴドフリー法律事務所によるリスクへの対応を命じる大統領令(4月9日)

この大統領令は、サスマン・ゴドフリー法律事務所に関して、関係者のセキュリティクリアランスの即時停止、連邦政府施設への立ち入りや職員との接触の制限、さらに政府機関への雇用の禁止を命じ、また政府契約を請け負う業者についてもサスマン・ゴドフリーとの関係があるか精査を求めている。この措置は、特定の法律事務所による活動が国家の利益や安全保障に反すると判断された事例の1つとして、個別に対応がとられたものである。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

■解説付き■ 防衛関連調達の近代化と防衛産業基盤におけるイノベーションを創発するための大統領令(4月9日)

この大統領令は、防衛関連調達の柔軟性と効率性を高めるとともに、防衛産業基盤の活性化を図ることを目的としている。具体的には、国防総省全体における調達プロセスの簡素化、革新的手法の導入を担う人材の育成、さらに防衛装備取得プログラムにおける無駄や遅延に対処する包括的な見直しが命じられている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

解説
この大統領令は、防衛調達における様々な問題が、迅速で効果的な能力の導入とそれに必要なイノベーションの妨げになっていることを指摘し、課題解決の方策を指示している。中でも注目されるのは、煩雑な調達規則が防衛産業への参入障壁を形成しているとの問題意識を背景にバイデン政権が創設した、「適応型調達枠組み(Adaptive Acquisition Framework: AAF)」の積極的な活用を指示していることである。これにより、既存の調達手続を省略した迅速な装備調達と、民生品の導入や防衛産業への新規参入の促進が期待されている。また、各軍の主要装備品事業の90日以内の点検も指示しており、各事業間の優先順位の明確化を企図している。これもバイデン政権が重視した方向性だが、各軍種や地域別統合軍司令部の要望を調整して満遍なく取り入れる中、大きな成果を上げることができなかった。このように考えると、防衛力整備の分野において、トランプ政権の政策にはバイデン政権との連続性が残されており、ボトムアップの政策進言が比較的機能している可能性がある。(小木 洋人)

■解説付き■ アメリカの海洋覇権を取り戻すための大統領令(4月9日)

この大統領令は、米国の建艦能力や海洋産業の衰退に対する懸念を踏まえ、これに総合的に対処することを命じるものである。国家安全保障問題担当補佐官を中心に「海洋行動計画(MAP)」を策定し、優先項目を特定したうえで、関連投資の促進、カナダやメキシコ経由による港湾料金や租税の回避への対処、安全保障上の海上態勢の強化、造船能力の拡充や労働者育成による海洋産業の支援、さらには規制緩和や調達の効率化などを進める方針が示されている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

解説
トランプ政権は2025年4月9日、造船所や港湾インフラの整備、ならびに乗組員の教育を通じて、アメリカの海運業界を強化することを目的とした大統領令を発表した。同令には、海洋アクションプラン(MAP)の策定、中国製または中国籍の船舶の寄港時における入港料の徴収、さらには同盟国に対する協力要請などが盛り込まれている。アメリカ国内では現在、造船能力、商船保有数、海軍艦艇数のいずれにおいても中国との戦略的競争において劣後しているとの認識が広がっており、こうした状況への対処は喫緊の政策課題とされている。ホワイトハウスが公表したファクトシートによれば、世界で運航中の船舶のうちアメリカ製はわずか0.2%に過ぎない一方で、中国製が全体の74%を占めている。また、アメリカの主要港湾では国産ガントリークレーンは一切使用されておらず、その約8割が中国製である。他方で、本大統領令の目的が必ずしも明確にされていない点については、留意が必要である。大統領令では、その目的を「国家安全保障および経済的繁栄の確保」と掲げているものの、具体的な戦略目標は明示されていない。ただし、その内容から推察するに、同令は米中戦争への備えとして海軍力の増強を意図しているというよりも、戦時に資源や物資を輸送するために召集可能な商船隊の整備に主眼を置いていると考えられる。造船能力に劣るアメリカが短期間で成果を出すためには、優れた造船能力を有する同盟国、特に日本からの協力を得なければならない。トランプ政権との通商交渉において、日本は、アメリカの造船所への投資、船舶設計に関する技術支援、人材育成などを交渉材料として活用する余地があるだろう。(井上麟太郎)

競争を妨げる規制障壁を削減する大統領令(4月9日)

この大統領令は、いくつかの規制が新規市場参入者を排除したり、競争や起業家精神、革新を妨げているとして、各機関の長に対し、全ての規制の見直しを行い、修正や撤回に関する提案を行うよう命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

ゼロベース規制予算によりアメリカのエネルギーを解放する大統領令(4月9日)

この大統領令は、特にエネルギー分野において、規制が過度に効率を妨げている現状を改革するため、規制に「日没条項(サンセット条項)」を組み込むよう各省庁に命じている。この条項により、新たな規制は原則として1年以内に失効するものとされ、その延長には正当な理由と再評価が必要とされる。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

外国防衛販売の改革により迅速化と説明責任を向上を進める大統領令(4月9日)

この大統領令は、防衛分野における米国とパートナー国との協力を効果的なものにするため、迅速で透明性の高い防衛販売システムの確立に加え、関連する規則や規制の緩和を命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

シャワーヘッドの適切な水圧を維持するための大統領令(4月9日)

この大統領令は、過度な規制が米国経済と個人の自由を制約している一例として、オバマ・バイデン政権が「シャワーヘッド」の定義に関する数千語に及ぶ規制を制定したことを挙げ、エネルギー長官に対して、この複雑で過剰な規制を撤回するよう指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

違法な規制の廃止を指示する大統領令(4月9日)

この覚書は、違法、不必要かつ過重な規制が米国の経済成長と革新を妨げているとし、規制の廃止を指示している。2/19の「合法的な統治の確保と大統領の「政府効率化省」規制緩和イニシアティブの実施に関する大統領令」では、発令後60日以内に規制の見直しを行うことを命じていたが、今回の覚書では、見直しの際に、最近の10の最高裁判決によって示された憲法上の境界に照らし、違法となる規制を優先すること、また、見直しの結果、規制が不当であると判断した場合は即座に撤廃手続きを始めることを指示している。さらに、当初違法または潜在的に違法であると特定された規制を撤廃しない場合には、その理由を文書で提出するよう求めている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

布告・覚書・公式発表一覧

不法移民が社会保障法に基づく還元を受けることを阻止するよう求める覚書(4月15日)

この覚書は、2/19付の「納税者によるオープンボーダー(開かれた国境)への補助金の廃止に関する大統領令」(EO14218)に関して追加の指示を与えるもの。具体的には、不法移民やその他不適格者に対する社会保障給付を阻止するほか、故人の身分を騙った受給などの問題にも対処する。(覚書はこちら、ファクトシートはこちら

許認可・審査技術を21世紀に適した形へアップデートさせるための覚書(4月15日)

この覚書は、インフラプロジェクト等に対する環境面での許認可・審査手続きについて、技術的手段を通じて効率化を図り、プロセスの迅速化を実現することを目的としている。これに向けて、環境品質会議(CEQ)に対して「許認可・審査技術に関する行動計画」の策定を求めるとともに、省庁横断的な「許認可・審査イノベーションセンター」を新設し、関連技術の開発・導入や関係機関間の調整を推進することとしている。(覚書はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら

トランプ効果:エヌビディアが牽引するアメリカ製半導体ブーム(4月14日)

ホワイトハウスは、エヌビディアがAIスーパーコンピューターを完全にアメリカ国内で製造すると発表したことを受け、これをトランプ大統領が推進する米国内製造業の復活の成果だと強調している。エヌビディアは、アリゾナ州で先端チップを製造し、テキサス州でスーパーコンピューターを組み立てる予定で、今回の発表は、今後4年間で5000億ドル規模のAIインフラを米国内に投資する計画の一環である。(詳細はこちら

ホワイトハウス医師からの覚書(4月13日)

ホワイトハウスによると、2025年4月11日、トランプ大統領は年次健康診断を受けた。公開された覚書によると、トランプ大統領は認知面、身体面ともに優れた健康状態にあり、大統領としての職務を完全に遂行できる状態にある。(覚書はこちら

第12週の勝者:アメリカ国民(4月11日)

ホワイトハウスは、トランプ政権第12週の成果について、相互貿易政策により75カ国以上が交渉のテーブルについたことをはじめ、インフレ抑制、不法移民対策、規制緩和の推進などを挙げた。(詳細はこちら

米国南部国境の封鎖および侵略の撃退を目的とした軍事任務に関する覚書(4月11日)

この覚書は、1/20の大統領令(「アメリカの領土保全を守るための軍の役割を明確化する大統領令」)で軍に命じられた南部国境封鎖と侵略撃退の任務を遂行するため、追加のガイダンスを提供している。具体的には、南部国境付近で軍事活動を実施できるように、ルーズベルト保留地を含む連邦政府所有地の管轄権を国防省に移すことなどが指示されている。(覚書はこちら

2025年4月2日付大統領令14257(改正済)における例外措置の明確化に関する覚書(4月11日)

この大統領令は、半導体製品が4/2の大統領令(「米国の莫大な貿易赤字を引き起こす貿易慣行を是正するため、相互関税を通じて輸入を規制する大統領令」)において課された相互関税の適用対象から除外されていることを確認し、その例外措置が、後続の4/8の大統領令(「中国との相互関税の改定と、少額輸入品に適用される関税義務の更新を命じる大統領令」)と4/9の大統領令(「貿易相手国による報復や協調姿勢を反映して、相互関税率の調整を命じる大統領令」)にも継承されていることを明らかにするものである。4月5日以降に誤って課された関税は、税関・国境取締局の手続きに従って返金される。(覚書はこちら

「アメリカは復活した‐インフレは復権しない」(4月10日)

ホワイトハウスは、予想を上回るインフレ率低下が起こっているとし、処方薬や運賃、エネルギー価格が低下していることを成果として強調した。(詳細はこちら

「トランプ減税の措置が延長されなければ起こってしまうこと」(4月10日)

ホワイトハウスは、議会で審議中であった減税・雇用法(「トランプ減税」)の延長がもたらす恩恵を強調した。また延長が否決された場合には国民の負担が急増すると警告した。(詳細はこちら

悪質な情報漏洩と虚偽の流布を行った者によるリスクへの対応を命じる覚書(4月9日)

この覚書は、元国土安全保障省首席補佐官のマイルズ・テイラー氏が、機密情報の不正な公開および虚偽の主張を行ったとされることを受け、同氏ならびにその関連組織(ペンシルバニア大学等)の職員に対するセキュリティクリアランスの停止を命じるものである。テイラー氏は2018年、政権内に在籍しながら匿名でトランプ政権を批判する論考と著書を発表し、後に自身が執筆者であることを明かしていた。覚書では、国土安全保障省長官に対し、同氏の過去の政府内での活動を精査し、今後必要な措置を講じるよう指示している。(覚書はこちら、ファクトシートはこちら

クリス・クレブス元CISA長官と政府検閲によるリスクへの対応を命じる覚書(4月9日)

この覚書は、クリス・クレブス氏がサイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁(CISA)長官であった際に過剰な検閲と言論抑圧を行ったとして、同氏及びその関連会社等の職員についてセキュリティクリアランスの停止を命じるものである。なお、同氏は2020年の大統領選後に選挙不正を巡ってトランプ大統領からCISA長官を解任されていた。また1/20の「言論の自由の回復と連邦政府による検閲を終結させる大統領令」に基づき、CISAの過去6年間の活動を精査し、今後の措置を検討するとしている。(覚書はこちら、ファクトシートはこちら

2025年アメリカ合衆国の教育と共有の日に関する布告(4月9日)

この布告は、ホロコースト後に宗教運動を築き、世界中のユダヤコミュニティに信仰を届けたラビ・メナヘム・メンデル・シュネウルゾーンを称え、2025年4月9日を「教育と共有の日」と定めている。(詳細はこちら

全米・元戦争捕虜を称える日に関する布告(4月9日)

この布告は、祖国の自由を守るために捕虜となったすべての元兵士に敬意を表し、2025年4月9日を「全米・元戦争捕虜を称える日」と定めるものである。また、前政権下で不法移民が高級ホテルに滞在する一方で、退役軍人が路上で寒さに震えていたことは「最も恥ずべき事態」であり、今後、米国は「力による平和」のもとで、無駄な外国の戦争を終わらせていくこと示されている。(詳細はこちら

全米犯罪被害者の権利週間に関する布告(4月9日)

この布告は、バイデン前政権下で暴力犯罪や不法移民が増加したことを非難した上で、2025年4月6日〜12日を「全国犯罪被害者の権利週間」と定め、全ての国民、家族、警察、地域・信仰団体、民間組織が協力して被害者の支援と権利保護に努めるよう指示している。(詳細はこちら

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