トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.28(2025年8月6日-8月12日)

大統領令一覧
中華人民共和国との継続的な協議を反映して相互関税率をさらに修正する大統領令(8月11日)
この大統領令は、対中関税の一時停止措置をさらに90日間延長し、2025年11月10日まで継続することを命じるものである。米中間の関税措置については、2025年5月12日の大統領令14298で対中国の追加関税が90日間一時停止され、その期限が8月12日に到来するところだった。今回のさらなる90日間の停止延長は、米中間で継続中の協議や新たな情報、閣僚からの提言を踏まえて決定されたものである。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
コロンビア特別区における犯罪緊急事態を宣言する大統領令(8月11日)
この大統領令は、首都ワシントンD.C.が全米で最も高い殺人や強盗などの犯罪率を記録し、治安が著しく低下していることを受け、ワシントンD.C.における緊急事態を宣言するものである。特に、首都警察(Metropolitan Police Department of the District of Columbia)を連邦政府の管理下に置くことを命じ、その運用指揮権を司法長官に委任している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
確定拠出年金「401(k)」投資家のオルタナティブ資産へのアクセス拡大に関する大統領令(8月7日)
この大統領令は、確定拠出型年金「401(k)」において、未公開株式、不動産、デジタル資産などのオルタナティブ資産への投資を可能とするため、制度の見直しを命じるものである。労働省や証券取引委員会など関係当局に対し、関連規制や手続き、ガイダンスの改訂を進めるよう指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
連邦政府の助成金監査体制を改善するための大統領令(8月7日)
この大統領令は、連邦政府による助成金の使途や複雑な申請プロセスの問題を是正するため、各機関に上級職員を任命し、分野の専門家等とともに助成プログラムの正当性や重複、申請手続きの容易さを審査することを命じる。また裁量的助成については、大統領の政策優先事項や「ゴールドスタンダード科学」と沿うこと・使途が人種に基づく思想や性別の二元性の否定、不法移民や反米価値観の助長にあたらないことなどを求め、機関の優先事項や国益に沿わなくなった助成を終了させる措置を講じることを命じた。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
全国民に公平公正な銀行サービスを保証するための大統領令(8月7日)
この大統領令は、金融規制当局及び銀行が政治的事由で顧客を審査したりサービスの提供を制限したりすることが違法であるとして、これを全面的に規制するものである。具体的には、規制当局に対し政治的事由に基づくリスクという概念自体を棄却することを求め、過去に同事由で金融サービスを制限・拒否された顧客に対し中小企業庁主導で特定と補完措置を執ることを命じたほか、財務長官は今後同様の政治的なサービス制限を是正するための戦略を策定する。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
インドへの関税50%:ロシア政府の米国に対する脅威に対処するための大統領令(8月6日)
この大統領令は、8月27日以降、インドからのほぼ全ての輸入品に対し25%の従価関税を追加で課し、それまでインドに課された関税25%と併せて最大50%とするものである。ロシアが米国の国家安全保障に対する脅威である中、インドがロシア産原油の輸入を行っていることが根拠となっている。また、他国についてもロシア産原油の直接または間接的な輸入の状況について対応措置を検討するよう商務長官らに命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
レポート:確定拠出年金制度を通じた、オルタナティブ資産投資への個人向けアクセスについて(8月12日)
ホワイトハウスは、確定拠出年金のアクセス拡大をテーマとした大統領経済諮問委員会(CEA)によるレポートを公表した。8月7日の大統領令で命じられたオルタナティブ資産投資へのアクセス拡大に関する影響をまとめている。(詳細はこちら、報告書全文はこちら)
スミソニアン博物館の展示や資料の内部調査に関する協会宛て書簡(8月12日)
ホワイトハウスは、スミソニアン博物館群の包括的な内部調査を行うため、スミソニアン協会に対して対応を要請する書簡の全文を公開した。3月27日の大統領令に基づき、党派性や修正主義的な要素を排除した歴史的正確性を追求することを目的とした調査と記されている。独立250周年関連の企画や展示、全所蔵品や組織内のマニュアル・ガバナンス文書などに関する資料の網羅的な提出や見直しが求められている。(詳細はこちら、書簡原文はこちら)
「トランプ大統領、『ワシントンD.C.を再び安全にする』選挙公約を実現」(8月12日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領が大統領選挙前から「ワシントンD.C.を安全にする」という目標を掲げてきたことに触れ、11日の「コロンビア特別区における犯罪緊急事態を宣言する大統領令」がによって目標が達せられたことを強調した。トランプ大統領は2023年頃よりワシントンD.C.における法執行強化や連邦政府の管轄下での清掃・修繕を主張し続けてきた。(詳細はこちら)
ストックホルムにおける米中経済・貿易協議に関する共同声明(8月11日)
ホワイトハウスは、2025年5月12日のジュネーヴ共同声明およびロンドン、ストックホルムでの協議を経て米中間で合意した内容を共同声明として発表した。声明では、米中双方が互いの輸入品に対する追加関税のうち24%を2025年8月12日からさらに90日間一時停止し、残りの10%は維持する方針を示した。また、中国側がジュネーヴ共同声明に基づき、米国に対する非関税措置の撤廃に向けて必要な措置を継続することも盛り込まれている。(詳細はこちら)
ワシントンD.C.の「解放の日」(8月11日)
トランプ大統領は、ワシントンD.C.に州兵を派遣する大統領令を発令したことに関して、会見で「今日はD.Cの解放の日だ。我々は首都を取り戻す」と発言した。またホワイトハウスは、長年の民主党支配によってワシントンD.Cの治安悪化が深刻化したことを指摘。さらに、トランプ大統領の政策が地元住民や訪問者から歓迎されていることを紹介した上で、同大統領が首都を安全で美しい街にするという約束を着実に果たしていると強調した。(詳細はこちら)
コロンビア特別区における法と秩序の回復に関する覚書(8月11日)
この覚書は、ワシントンD.C.で深刻化する暴力犯罪に対処するため、国防長官に対し、必要と判断する人数の州兵を動員するよう指示するものである。州兵の動員は、大統領が「法と秩序が回復した」と判断するまで継続し、必要に応じて国防長官が近隣州知事と連携することも命じている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
「トランプ大統領、再び歴史的な和平合意を仲介」(8月8日)
ホワイトハウスは、長年紛争が続いていたアゼルバイジャンとアルメニアが、トランプ大統領の仲介により和平共同宣言に署名したと発表した。また、両国は米国との二国間経済協定にも署名した。発表には、両首脳がトランプ大統領への感謝を述べるコメントが含まれ、トランプ大統領が就任以降、数々の和平を実現してきたことが強調されている。(詳細はこちら)
「アップル、米国の製造業強化へ総額6,000億ドルの拠出を表明」(8月7日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領がアップル社と共に会見を行い、同社が今後4年間で米国内向け投資を6000億ドル増額すると発表した様子を公開した。また、同社がサプライヤーやパートナー企業に対して米国内での製造を促すプログラムを開始することにも言及し、大規模な雇用創出にも繋がることを強調した。(詳細はこちら)
高等教育の学生受け入れにおける透明性を確保するための覚書(8月7日)
この覚書は、高等教育の学生受け入れに関するデータが不足しているとして、教育長官に対し透明性向上のための是正措置を求めるものである。具体的には、統合高等教育データシステム(IPEDS)の収集プロセスを合理化してデータ活用を推進し、オンライン上のデータ提供を学生や保護者にとってわかりやすく改良することを命じたほか、教育機関に対する報告要件の拡大やデータに対する審査の厳格化、不正に対する是正措置も求められている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
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