解説 アイルランド大統領選挙:左派コノリー氏の圧勝と現政権への不満

2025年10月24日、アイルランドにて、同国において儀礼的役割を担う大統領を選出する選挙が実施され、翌25日に開票された。大統領の座を争ったのは、左派系無所属のキャサリン・コノリー下院議員と、中道右派で与党のフィナ・ゲール党のヘザー・ハンフリーズ副党首らである。コノリー下院議員は最大野党のシン・フェインや社会民主党、People Before Profit、複数の無所属議員らの支持を受け、事実上の左派統一候補として選挙戦に臨んだ。
選挙の結果、コノリー下院議員が91万4143票(得票率63%)を獲得し、ハンフリーズ副党首の29%を大きく上回る圧勝を遂げると同時に、アイルランド史上最多の得票数での大統領当選となった。コノリー議員は首都であるダブリンの南中部、ゴールウェイ西部、ドニゴールで有効投票の4分の3以上を獲得した一方で、ハンフリーズ副党首が勝利したのは自身の出身地であるカヴァン=モナハン選挙区のみであった。他方、投票率は46%と低く、無効票の数が近年の大統領選で最多となり、投票総数の約13%が無効とみなされた異例の選挙となった。左派色の強いコノリーと、ビジネス寄りの反フリーズという選択肢しかなく、自らの意見を反映していないと感じる有権者、特に労働者層での不満が高かったことが示唆される。
今回の大統領選では、コノリー議員が掲げた「すべての人にとって包摂的な大統領」を目指す姿勢が有権者に広く浸透し、左派系政党との連携を背景に幅広い層から支持を集めたことが、勝利の大きな要因とされる。序盤はハンフリーズ副党首が優勢と見られていたものの、選挙戦が進むにつれて無党派層を中心にコノリー氏への支持が上昇し、最終的にこれが勝敗を左右した。こうした支持の広がりの背景には、生活費の高騰が続く中、中道右派系の現政権に対する不満が強まっていた状況があり、より変化を求める有権者の意向がコノリー議員に向かったと指摘されている。
(文責:「選挙は世界を変えるのか」プロジェクトメンバー、画像出典:Shutterstock)

選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義
選挙による国内政治のダイナミクスの変化は世界政治に影響を与え、地政学・地経学上のリスクを生じさせる可能性があります。また、報道の自由の侵害や偽情報の急増など、公正な選挙の実施に対する懸念が高まっているなか、今後の民主主義の行方が注目されています。本特集では、各国の選挙の動向を分析するとともに、国内政治の変化が国際秩序に与える影響についても考察していきます。
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