トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.15(2025年4月23日-4月30日)

ハッブル宇宙望遠鏡の35周年を記念する大統領メッセージ

トランプ政権トラッカーの一覧(2025年1月20日~)
【一覧】トランプ政権トラッカー(大統領令・布告・覚書・発表)
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大統領令一覧

輸入品に対する特定の関税について調整を命じる大統領令(4月29日)

この大統領令は、複数の政策的関税措置(自動車・自動車部品、鉄鋼、アルミニウム、北部・南部国境関連など)が同じ輸入品目に重複して課される場合、必要以上の関税負担が生じないよう、どの関税を優先的に適用するかのルールを定めたもの。具体的には、対象となる関税措置間で「スタッキング」(累積適用)を原則として排除し、特定の優先順位に従って一部の関税のみを適用する。ただし、鉄鋼とアルミニウムについては例外的に重複適用が認められる場合がある。また、これら以外の通常の関税やアンチダンピング関税などは引き続き別途適用される。(大統領令はこちら

犯罪の追及と市民の保護のため、米国の法執行機関を強化・活性化する大統領令(4月28日)

この大統領令は、コミュニティの安全を図るため、法執行機関の権限とリソースを強化し、警察官や関連職員への総合的な支援を行うものである。具体的には、警察官の職務に対する法的保護や補償の強化、待遇改善を図るとともに、訓練制度の充実、犯罪データの一元化・整備、刑務所の収容能力向上などの措置が含まれる。さらに、余剰軍事資産の割当てや、国土安全保障タスクフォースを活用した連邦・州・地方間の連携強化も進めることとしている。(大統領令はこちらファクトシートはこちら

米国のコミュニティを外国人犯罪者から守るための大統領令(4月28日)

この大統領令は、いわゆる「聖域都市」が連邦移民法の執行を妨げているとして問題視し、法の順守を徹底させることを目的としている。具体的には、非協力的な自治体のリストを作成・公表し、これらの自治体を連邦法に準拠させるために、補助金の制限やその他あらゆる措置を講じるよう命じている。また、当該地域において不法移民が公的給付を受けたり、米国市民よりも優遇される事態を防ぐことも指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

米国のトラック運転手に対し、常識的な交通ルールを順守するよう求める大統領令(4月28日)

この大統領令は、商用車の運転手に一定の英語能力を求める連邦規則が十分に施行されていないとして、既存の英語能力要件の厳格な実施を指示するものである。具体的には、英語能力検査に関する新たなガイダンスを発行し、要件に適合しない運転手を業務から外す措置を可能にするほか、各州で発行された商用運転免許証について不正の有無を調査することが求められている。さらに、運輸長官に対しては、トラック運転手の安全や処遇に関する施策の検討も命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

アメリカの沖合に眠る重要鉱物資源を解放する大統領令(4月24日)

この大統領令は、海底資源の開発において米国がリーダーシップを維持し、敵対勢力から独立した重要鉱物の供給を確保する必要があるとして、国内の海底資源鉱物の探索能力の強化や投資促進、許認可手続きの迅速化を指示するもの。また、商務省や内務省、エネルギー省、国防省など関係政府機関間の調整・連携を強化して効率的な政策推進を図るとともに、米国企業が他国の排他的経済水域や国際海域における責任ある鉱物開発を支援する。同盟国やパートナー国との協力体制の強化や、産業界との官民連携によるサプライチェーンの強靭化も重視されている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

連邦政府における雇用の試用期間を強化する大統領令(4月24日)

この大統領令は、本来は新規連邦職員の適性を見極めるための制度である試用期間が、十分に活用されないまま能力不足の職員が正規採用されている現状を問題視し、その運用を厳格化することを命じている。具体的には、試用期間終了時に雇用継続が公共の利益に資すると判断された者のみを正規採用とし、それ以外の者については自動的に雇用を終了させる仕組みを導入する。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

アメリカの若者に対するAI教育の推進を命じる大統領令(4月23日)

この大統領令は、AIがもたらす革新的影響を重視し、若い世代に向けた教育機会を拡大することで、同分野における米国の国際競争力とイノベーションの促進を図るものである。具体的には、科学技術政策局長をトップとする「ホワイトハウスAI教育タスクフォース」を設置し、その下でAI分野での学習・創造を促す「大統領AIチャレンジ」の実施や、教育リソース開発を目的とした官民パートナーシップを構築することなどが指示されている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

機会の平等と能力主義の復興を命じる大統領令(4月23日)

この大統領令は、従来進められてきた「Disparate-impact liability」(結果的に生じる差別的効果を鑑みて対応する責任)が法の下の平等に反し、機会を制限しているとして問題視し、その排除を求めるものである。具体的には、「Disparate-impact liability」を含むあらゆる措置や規制、法等に対し撤廃・改革・優先順位の格下げ等の措置をとる。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

学校規律政策に常識を取り戻す大統領令(4月23日)

この大統領令は、学校規律政策において「公平」の名の下で行われてきた措置を問題視し、改革を求めるものである。具体的には、教育長官・司法長官に対し、人種にかかわらず法の下で平等な学校規律を実現するためのガイドラインの発行、連邦法違反の疑いがある教育機関への対応、州・地方当局との連携を命じている。また、教育長官に対しては、差別的なイデオロギーに基づく規律政策の現状や影響を分析し、必要に応じて模範的な政策の提案を含む報告書を提出するよう求めている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

高収入専門職の需要増に備えて国民の育成を進める大統領令(4月23日)

この大統領令は、米国の再工業化や先端技術分野の活性化に伴い予想される労働力需要を踏まえ、労働者の育成を進めるものである。具体的には、労働・商務・教育長官に対し需要増加の見込まれる分野に合わせて労働力開発プログラムの見直し・効率化を命じるほか、アプレンティスシップ(登録見習い)制度を拡大して新規に100万人規模の育成を目指す。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

「歴史的黒人大学(HBCU)」における卓越性とイノベーションを促進するため、「ホワイトハウス・イニシアティブ」の設置を命じる大統領令(4月23日)

この大統領令は、第1次トランプ政権時から引き続き、「歴史的黒人大学(HBCU)」の能力向上に取り組むものである。具体的には、大統領府に「HBCUに関するホワイトハウス・イニシアティブ」を設置し、組織開発、財政管理、能力開発プログラムの促進、教育へのアクセス向上、競争力強化などを推進する。また、教育省内にHBCUの学長や各分野の代表者からなる諮問委員会を設置し、HBCUに関連する政策について大統領に助言する。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

高等教育の強化のため認定制度を改革する大統領令(4月23日)

この大統領令は、高等教育機関の認定制度において質の保証が不十分であり、また「違法な差別イデオロギー」とされるDEI(多様性・公平性・包括性)が蔓延しているとの懸念から、全面的な改革を命じるものである。具体的には、教育長官に対し認定プロセスの合理化や認定機関間の競争促進を指示するとともに、司法長官と連携して高等教育機関における「差別」の実態を調査し、対応するよう求めている。(大統領令はこちら)、ファクトシートはこちら

外国が米国の大学に及ぼす影響の透明性に関する大統領令(4月23日)

この大統領令は、米国の高等教育機関への不透明な外国資金の流入に対する対応措置を求めるものである。具体的には、1965年高等教育法の規定に基づき、大学に対して海外から調達する資金の出所や目的等に関する情報の開示を義務付け、違反する機関には責任を問うこととしている。(大統領令はこちら

布告・覚書・公式発表一覧

「デマばかりの100日:フェイクニュースを見抜く」(4月29日)

ホワイトハウスは、トランプ政権発足から100日間の間に広まったとされる数多くの「デマ」や「フェイクニュース」の具体例を挙げ、それぞれに対する事実関係(ファクトチェック)を提示した記事を公開した。内容は、政策や政権運営、DOGEや各長官に関する誤報・誤解への反論が中心であり、批判的報道やSNS上の主張に対して政権側の見解や事実を改めて示すものとなっている。(詳細はこちら

ヘンリー岬における初上陸と十字架建立の418周年記念を祝う布告(4月29日)

この布告は、1607年に開拓団が現在のバージニア州ヘンリー岬に上陸を果たして十字架を建て、ジェームズタウンの建設へと進んだ日から418周年たる2025年4月29日を祝すものである。(詳細はこちら

米国への自動車及び自動車部品の輸入調整について、改正を命じる布告(4月29日)

この布告は、自動車の輸入依存を減らし国内生産を奨励するための関税措置について、時限的な修正を行うものである。具体的には、米国内で最終組み立てが行われた自動車に対し、2026年4月30日まではメーカー希望小売価格の3.75%、その後2027年4月30日までは2.5%に相当する額を、課される関税から控除する措置が適用される。ただし、還付申請における不正や超過請求があった場合には、厳正な措置を講じることが定められている。(布告はこちら、ファクトシートはこちら

「投資の続く100日間:5兆ドル以上の新規投資がアメリカの未来を照らす」(4月29日)

ホワイトハウスは、トランプ政権発足後100日間で5兆ドル以上の対米投資が確保され、45万以上の雇用が創出されたと振り返った。また直近の製造業・成長事業に対する投資案件を挙げ、第1次政権時の減税などが好影響をもたらしたことにも触れた。(詳細はこちら

「トランプ効果:第二次トランプ政権下で進行中の新規投資案件リスト」(4月29日)

ホワイトハウスは、あらゆる分野で進行中の投資案件リスト(抜粋)を更新した。日本企業の投資案件も名を連ねており、また日本が1兆ドル規模の対米投資を発表したことにも触れている。(詳細はこちら

トランプ大統領就任後最初の100日間における経済実績に関するメモ(大統領経済諮問委員会)(4月29日)

ホワイトハウスは、大統領経済諮問委員会(CEA)が送付した、トランプ政権最初の100日間における経済効果を分析したメモを公開した。具体的には、雇用創出やインフレ抑制のほか、自動車販売数増加や住宅ローン金利低下などの数値が成果として挙げられ、また大規模な規制緩和による節約効果も大きいとされている。(詳細はこちら

2025年 世界知的財産権の日(4月25日)

この布告は、アメリカの経済成長、技術的進歩、競争力維持の鍵を握るのは知的財産権の保護であるとし、現在トランプ政権が関税を活用して知的財産権保護を強力に推進していることを強調した上で、2025年4月26日を「世界知的財産権の日」と定めている。(詳細はこちら

第14週の勝利:トランプ大統領は経済成長を促進し、国家安全保障を強化(4月25日)

ホワイトハウスは、トランプ政権第14週の成果として、数々の企業が米国への投資を発表したことをはじめ、不法移民の追放や米国のエネルギー生産力強化、教育機会の拡大、高等教育改革などを強調した。(詳細はこちら

■解説■ハッブル宇宙望遠鏡の35周年を記念する大統領メッセージ(4月24日)

ホワイトハウスは、宇宙の謎を解き明かし、米国の探索力を象徴するハッブル宇宙望遠鏡の35周年を祝うとともに、トランプ政権が引き続き宇宙探査をリードし続けることを目指すと発表した。(詳細はこちら

解説
1990年4月に地球周回軌道に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、現在も太陽系や深宇宙の観測を続けており、その成果は人類の宇宙に関する理解を飛躍的に高めてきた。
そのハッブル宇宙望遠鏡の打上げ35周年を祝うトランプ大統領のメッセージは、大統領の宇宙科学への支持を示すサインとも受け取れる。
しかし一方で、間もなく公表される米連邦政府の2026年度予算要求においては、NASA科学部門の予算が5割近く削減され、次世代のナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡(2027年打上げ予定)計画はキャンセルされるとの報道が出ている。
このようなNASA科学予算の大幅な削減報道に対しては、民主党のみならず、共和党側からも懸念の声が出ており、議会にて一定の巻き返しがあるものと予想されるが、いずれにしても、第2次トランプ政権からは、宇宙科学の方向性を巡って交錯するメッセージが発信されており、今後の政策の方向性を慎重に見極めていく必要がある。(梅田 耕太)

アメリカの選挙における違法な献金や外国からの寄付に関する調査(4月24日)

この覚書は、オンライン募金プラットフォームを通じて、違法なストロー・ドナー(他人名義での献金)や外国からの不正な寄付が行われ、米国の選挙に不当な影響を与えている可能性があるとして、司法長官に対し、その実態を調査し、180日以内に報告するよう命じている。特に民主党系の主要プラットフォーム「ActBlue」に関する事例が複数挙げられている。(覚書はこちら、ファクトシートはこちら

「ホワイトハウスのAI行動計画策定に向けて、国民から1万件超の意見が提出された」(4月24日)

ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)は、AI行動計画の策定に向けた意見募集に対し、1万件以上のパブリックコメントを受け取ったと発表した。この意見募集は、1/23付の「人工知能分野におけるアメリカのリーダーシップ発揮に向けた障壁を取り除く大統領令」に基づいて実施されたものである。(詳細はこちら

2025年 全国ボランティア週間の布告(4月23日)

この布告は、ボランティア活動の精神がアメリカのライフスタイルと密接に繋がっていることを想起し、また従事者への感謝を示して4月20日から4月26日までを「全国ボランティア週間」と宣言するものである。(詳細はこちら

2025年 ホロコースト犠牲者追悼週間の布告(4月23日)

この布告は、ヨム・ハショア(ホロコースト記憶の日)に際し、4月20日から4月27日までをホロコースト犠牲者追悼週間とすることに言及したものである。また、2023年10月以降の状況を踏まえ、反ユダヤ主義が依然として存在している現実を指摘し、政権としてその対応を継続していることを強調している。(詳細はこちら

2025年 国立公園週間の布告(4月23日)

この布告は、アメリカの歴史や文化とも深い関わりのある国立公園の重要性を示し、4月19日から4月27日までを国立公園週間と宣言するものである。またトランプ大統領は、マッキンリー山をはじめとして「アメリカの偉大さを称える名称」の復活を進めてきたことを強調した。(詳細はこちら

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