トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.33(2025年9月10日-9月23日)

大統領令一覧
ANTIFAを国内テロ組織に指定する大統領令(9月22日)
この大統領令は、活動団体ANTIFAが無政府主義的で暴力的であり、若者を過激化しているとしてテロ組織と指定し、その活動と資金源について捜査・阻止・訴追・解体を命ずるものである。また関連記事では、ANTIFAによるものとした事件を列挙した。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
ゴールドカードに関する大統領令(9月19日)
この大統領令は、米国の移民政策を国益に沿って再編成するため、商務省にゴールドカード・プログラム制度の創設を指示するものである。この制度では、個人が100万の寄付をした場合(法人の場合は200万ドルを寄付した場合)、その寄付を「卓越した事業能力」や「国家的利益への貢献」の証拠とみなし、移民ビザを迅速に取得できるようにする。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
ロングアイランド鉄道と、特定の労働組合に代表される従業員らの間に発生した争議について調査するための緊急委員会を設置する大統領令(9月16日)
この大統領令は、ニューヨーク市圏の通勤交通網を支えるロングアイランド鉄道会社と複数の労働組合に所属する従業員らとの間で発生している争議の解決に向け、鉄道労働法(RLA)の規定に基づき緊急委員会を設けて調査を命じるものである。緊急委員会は、大統領令が指名しかつ争議に利害関係をもたないメンバーから構成され、30日以内に報告書を提出する。(大統領令はこちら)
TikTok禁止の執行をさらにまた延期する大統領令(9月16日)
この大統領令は、1月20日の大統領令、4月4日の大統領令、6月19日の大統領令と引き延ばして法執行の一時停止が命じられていたTikTok禁止法について、さらに90日間の執行延期を命じるもの。次の執行猶予期間は2025年12月16日までとなる。(大統領令はこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
「国連にて、トランプ大統領が主権を擁護し、グローバリズムを拒否」(9月23日)
トランプ大統領は、第80回国連総会での演説において、グローバリズムが世界中に紛争と混乱を引き起こす破壊的なものであると強く批判し、米国の力強さのアピールに加えて主権国家同士で協力する必要性を訴えた。また、国連が実効性のない声明を出すだけで問題を解決しておらず、大統領自身が国連に代わって7つの戦争を終結させたことなど、国連の機能不全についても問題視した。(詳細はこちら)
「メラニア・トランプ大統領夫人、子どもの未来を育むための国際的連携を発足」(9月23日)
メラニア大統領夫人は、教育・イノベーション・技術を通じて子どもの幸福向上を目指す国際的な連携「Fostering the Future Together」を立ち上げた。国連総会での演説で、夫人は技術と教育の交差点における子供の発展を優先する重要性を訴えた。本連携は、各国首脳の配偶者とその同等の代表がメンバーを務め、各国内で活動を展開する予定である。(詳細はこちら)
全米暴力防止週間に関する大統領メッセージ(9月23日)
ホワイトハウスは、全米暴力防止週間を迎えるにあたり、ギャング暴力の被害者とその家族を追悼・支援するとともに、米国からギャングや麻薬カルテルを一掃する決意を改めて示した。また、トランプ大統領の就任以来、MS-13やトレン・デ・アラグア(Tren de Aragua)を外国テロ組織に指定し、One Big Beautiful Billの成立を通じて国境の壁建設等への資金を確保するなど、対応を進めていることも強調した。(詳細はこちら)
「ファクト:エビデンスは、アセトアミノフェンと自閉症の関連を示唆している」(9月22日)
ホワイトハウスは、妊娠中のアセトアミノフェン使用が子どもの自閉症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)のリスクを高める可能性があることを示す複数の大学の研究結果を紹介し、これに基づいて新たな健康指針を発表した。(詳細はこちら)
「振り返り:トランプ政権は『自閉症対策に大胆に取り組む』」(9月22日)
ホワイトハウスは、国立衛生研究所所長・FDA長官・保健福祉省メディケア・メディケイド・サービスセンター長らが連名で「politico」紙に投稿した論説記事を共有し、増加する自閉症に対しトランプ政権が取り組みを強化していることを強調した。(詳細はこちら)
2025年 全米ヒスパニック遺産月間(9月22日)
ホワイトハウスは、ヒスパニック系アメリカ人の国家への貢献を称え、2025年9月15日から10月15日までを「全米ヒスパニック遺産月間」として宣言した。(詳細はこちら)
2025年全米歴史的黒人大学週間(9月22日)
ホワイトハウスは、全国歴史的黒人大学週間にあたって、「歴史的黒人大学(HBCU)」が蓄積してきた歴史と基盤、人々の献身を称える大統領メッセージを公開した。またHBCUに向けた支援を第一次トランプ政権期から継続しているとして、現政権では4月の大統領令により、さらに踏み込んだ取り組みを行っていると強調した。(詳細はこちら)
ロシュ・ハシャナに向けた大統領メッセージ(9月22日)
ホワイトハウスは、ユダヤ暦における新年祭の期間であるロシュ・ハシャナに向けた大統領メッセージを公開した。またトランプ大統領は、信教の自由を守る中で反ユダヤ主義を終わらせるという姿勢を改めて強調した。(詳細はこちら)
全米農業安全・衛生週間に向けた大統領メッセージ(9月22日)
ホワイトハウスは、農業・畜産・林業従事者の努力と献身を称えるとともに、現場における安全および健康維持の徹底を呼びかける全米農業安全・衛生週間に際して、大統領メッセージを公表した。(詳細はこちら)
「トランプ大統領、国民とともにチャーリー・カークの永続的遺産を称える」(9月22日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領と閣僚関係者がアリゾナ州で開かれた故チャーリー・カーク氏の追悼式典に出席したことを公表した。トランプ大統領は暗殺事件を「国家全体への攻撃」として強く批判したほか、カーク氏の活動やメッセージは今後も継承されると述べた。(詳細はこちら)
「ホワイトハウス、新たに2つの都市を重大麻薬密売区域に指定」(9月22日)
ホワイトハウスの国家薬物取締政策局(ONDCP)は、麻薬密売に対する統合作戦を支援する重大麻薬密売区域(HIDTA)プログラムに、新たにインディアナ州セントジョセフ郡とオクラホマ州ロジャース郡を追加すると公表した。これによって、地域の当局に対するリソース・支援の提供が強化される。(詳細はこちら、HIDTA指定区域マップはこちら)
特定の非移民労働者の入国制限に関する布告(9月19日)
この布告は、専門職労働者の米国就労に必要なH-1Bビザが濫用され、とりわけIT業界において米国人労働者の就労機会を奪い、国家安全保障を脅かしていることを問題視し、H-1Bビザの申請料を10万ドルへ引き上げることを命じたものである。支払いを伴わない申請については、国益にかなう場合に限り、国土安全保障長官が個別に免除することができる。新たな申請料は、9月21日以降に提出される申請に適用され、延長がなければ12ヶ月後に失効する。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら、関連する公式発表はこちら)
2025年 全米 捕虜・作戦行動中行方不明者の追悼記念日に関する布告(9月19日)
この布告は、2025年9月19日を、捕虜(POW・Prisoner of War)および作戦行動中行方不明者(MIA・Missing in Action)を追悼する記念日と定めるものである。トランプ大統領は、第一次政権期にPOW/MIA旗の掲揚を義務付けた法を制定したり、北朝鮮からの遺骨返還を実現したりした成果を強調しつつ、依然として行方不明となっている約8万人の英雄について引き続き説明責任を果たすことを誓った。(詳細はこちら)
2025年憲法週間の布告(9月18日)
この布告は、合衆国憲法への署名から238周年であることを記念し、また1952年及び1956年の共同決議に基づき、2025年9月17日から9月23日までを憲法週間とするものである。またトランプ大統領は「多様性、公平性、包摂性」の廃止や星条旗の冒涜への訴追といった取り組みを挙げ、アメリカ市民権の価値を守っているとして強調した。(詳細はこちら)
「キャサリン・スカーレット氏、環境諮問委員会の第13代議長に就任」(9月18日)
ホワイトハウスは、大統領の環境政策を補佐し国家環境政策法(NEPA)の施行を主導する環境諮問委員会(CEQ)の議長として、キャサリン・スカーレット氏が上院の承認を受けて就任したことを公表した。またスカーレット氏は第一次トランプ政権期から継続的に環境政策・許認可に携わってきたとし、産業界や元議長らからの支持の声を取り上げた。(詳細はこちら)
アメリカ空軍発足78周年に向けた大統領メッセージ(9月18日)
ホワイトハウスは、1947年の発足以来米国の自由と安全、力の維持に貢献してきたアメリカ空軍の蓄積を称え、その78周年を祝う大統領メッセージを公開した。また6月のイラン核施設攻撃ではその能力と態勢が示されたとし、航空支配と「力による平和」を促進する空軍の力を高める政権の姿勢を示した。(詳細はこちら)
テクノロジー繁栄に関する米英協力に関する覚書(9月18日)
この政府間覚書は、AI、民生用原子力、核融合、量子技術を含む戦略的科学技術分野における米英協力の枠組みを定めるテクノロジー繁栄に関する協定の合意内容を示したものである。AI分野では、両国の専門機関による共同研究・開発やデータセットの共有、インフラ整備、人材育成などを掲げている。民生用原子力と核融合では、規制や制度的障壁の緩和やデータ共有を通じて先進技術の導入を促進するとともに、ロシアに依存しない核燃料サプライチェーンの確立を目指す。量子技術については、タスクフォースの設立、標準化活動や実証実験の推進に加え、産業界の交流を通じて実装に向けた協力を強化する。さらに研究セキュリティ、6G通信、投資協力なども盛り込まれており、今後は閣僚級作業部会を中心に進捗管理と協力深化を図ることとされている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
「トランプ大統領、2026年『薬物主要国リスト』を指定」(9月16日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領が米国への違法薬物の流入に責任のある23カ国を指定した「主要国リスト」を議会に提出したことを公表した。リストは中南米諸国を中心としつつ中国・インド・パキスタンなども含むほか、特にアフガニスタン・ボリビア・ミャンマー・コロンビア・ベネズエラの5カ国に対しては麻薬対策の改善を強く迫っている。(詳細はこちら、「主要国リスト」はこちら)
メンフィスに法と秩序を回復させる覚書(9月15日)
この覚書は、全米で最も深刻な犯罪率を記録するテネシー州メンフィスの治安回復を目的に、「メンフィス安全タスクフォース」を設立するとともに、戦争長官(国防長官)に対しテネシー州知事へ州兵派遣を要請するよう指示するものである。タスクフォースは主要な政府機関の代表で構成される予定で、ワシントンD.C.での治安対策に用いられた戦略を活用しつつ、メンフィスおよびテネシー州の主要な法執行機関と連携して治安対策にあたる方針である。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
「バンス副大統領と政権幹部、チャーリー・カークの永続的な功績を称える」(9月15日)
ホワイトハウスは、バンス副大統領とトランプ政権幹部らが、ホワイトハウスにて「チャーリー・カーク・ショー」特別版を開催し、チャーリー・カークの揺るぎない信念や愛国心を称える追悼の場となったと発表した。(詳細はこちら、全米のスポーツチームによるチャーリー・カーク追悼に関する公式発表はこちら)
「トランプ大統領、チャーリー・カークを称え、力強いインタビューの中で”成功を通じて団結”を呼びかける」(9月12日)
ホワイトハウスは、Fox & Friends によるトランプ大統領インタビューの要約を発表した。インタビューでトランプ氏は、殺害されたチャーリー・カークを「息子のような存在」と表現し、その死を聞いた時の衝撃を語った。また、急進左派の暴力に対しては投票で対抗すべきと呼びかけた。(詳細はこちら)
2025年愛国者の日・9.11同時多発テロから24周年に向けた布告(9月11日)
この布告は、2001年9月11日の同時多発テロ事件から24周年を迎え、犠牲者・遺族・生存者・緊急対応にあたった人々に敬意を表すとともに、2001年12月の共同決議に従って2025年9月11日を「愛国者の日」と宣言するものである。また2,977人の犠牲者を追悼するため、全米での半旗の掲揚を求めた。(詳細はこちら、9.11追悼式典の様子はこちら)
チャーリー・カークの記憶を称える布告(9月10日)
この布告は、この日ユタ州のイベントで銃撃され死亡したチャーリー・カーク氏を追悼するため、全米の連邦政府の施設・基地・艦艇及び大使館等の在外施設全てで9月14日まで半旗を掲揚するよう命じた。(詳細はこちら)
「行政管理予算局、連邦政府の委託業者に求められる不必要で冗長な会計要件について、数十件廃止することを提案」(9月10日)
ホワイトハウスは、行政管理予算局(OMB)の原価計算基準(CAS)委員会が、連邦政府の委託請負業者が費用を計上する際などに求められる60以上の要件を廃止する規則案を公表したことを報告した。(詳細はこちら、CAS委員会の規則案はこちら)
「トランプ大統領はバイデン政権のインフレ危機を打ち破った」(9月10日)
ホワイトハウスは、8月の生産者物価指数(PPI)が市場予測を下回ったことを挙げ、関税政策の物価への影響を改めて否定した。この中で、関税に相対しても企業が価格転嫁を控えているとし、利下げへの圧力を強めた。
詳細はこちら)
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