公益財団法人国際文化会館(所在地:東京都港区、理事長:近藤正晃ジェームス)は、本日、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)と合併いたしました。合併後の最初の取り組みとして、APIがこれまで手掛けてきた国際関係・地域研究・地政学の分野のプロジェクトを発展的に統合・改組した「地経学研究所(Institute of Geoeconomics: IOG)」を設立するとともに、所長として鈴木一人・東京大学公共政策大学院教授が就任したことをお知らせします。
「これまで日本では政治と経済、安全保障と民間活動、官と民など、それぞれの世界が完結して存在し、互いに干渉しながらも自律的なものとして扱われてきました。しかし、現代世界ではこれらの区別は意味を持たなくなり、地政学と経済が融合した「地経学」の枠組みでなければ理解できない事象が増えてきています。経済安全保障、経済制裁、技術覇権など、地経学が扱うべき課題は多いです。IOGでは、まずは経済安全保障と中国を中心に、幅広く地経学のテーマを扱い、国際社会に向けてスピード感をもって発信して、日本を、そしてアジア・太平洋を代表するシンクタンクへと育てていきたいと考えています。ご支援のほどよろしくお願いいたします。」
地経学研究所長 鈴木 一人
東京大学公共政策大学院教授。立命館大学国際関係学部卒、英国サセックス大学大学院ヨーロッパ研究所博士課程修了(現代ヨーロッパ研究)。筑波大学大学院人文社会科学研究科専任講師・准教授、北海道大学公共政策大学院准教授・教授などを経て現職。国連安保理イラン制裁専門家パネル委員(2013-15年)。
APIが2021年12月に公表した「経済安全保障に関する日本企業100社アンケート」では、グローバルに活動する日本企業が、米中の狭間で、さらには経済活動と安全保障という二つの要素の間で、どのようにバランスをとったらよいのか、その不透明性と事業への影響に苦悩する姿が浮かび上がりました。2022年に入り、ロシアによるウクライナ侵略とロシアへの経済制裁の長期化、経済安全保障推進法の成立など、世界は、冷戦後のグローバリゼーションの時代から、国際経済と地政学の戦略が渾然一体となる「地経学」の時代へと、大きく変わりつつあります。自由で開かれた、持続可能な未来をつくるためには、日本はどうしたらよいのか。また、グローバルに活動する企業は、どのように情報収集をし、リスクとコストのバランスをどう取ればよいのか。このような問題意識から、亀澤宏規氏(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役代表執行役社長グループCEO )、新浪剛史氏(サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)、森田隆之氏(日本電気株式会社代表取締役執行役員社長兼CEO)の3名が発起人となり、新たな地経学研究所が設立されることとなりました。
地経学研究所は、民間・独立のシンクタンクという立場から、APIや国際文化会館がこれまで築いてきた欧米のシンクタンクや国内外の政・官・財・学とのネットワークを最大限活用しながら、アジア・太平洋地域を代表する知の交流の拠点となり、グローバルでより高いインパクトを発することを目指してまいります。具体的には、まず以下のような取り組みを進めます。
1.国際関係・地域研究・地政学の分野における国内外の第一人者による情報収集、調査・研究、知見の蓄積と情報発信
2.経済安全保障分野の政策立案者とグローバルに活動する企業とを繋ぐハイレベルコミュニティの形成
3.グローバルに活動する企業の「地経学リスク」「経済安全保障」への対応力を高めるための、CGO(Chief Geoeconomics Officer)育成プログラムの提供や、地経学に精通した次世代リーダー人材を育成するための企業フェローの受け入れ
4.欧米のシンクタンクやアジアのビジネスコミュニティとの連携の推進(定期的な交流トリップの開催を含む)
Executive Committeeの下に、経済安全保障、中国アジア太平洋といった、領域・地域別のユニットを組成します。また、国際的な連携に向け、海外大手シンクタンクのトップおよび第一線の実務家等を中心としたGlobal Advisory GroupおよびGlobal Partnersを組成します。Executive Committeeは以下の3名から構成されます:
・鈴木一人 地経学研究所長(東京大学公共政策大学院教授)
・細谷雄一 アジア・パシフィック・イニシアティブ研究主幹(慶應義塾大学法学部教授)
・塩野誠 株式会社経営共創基盤 共同経営者 マネージングディレクター
亀澤宏規氏(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役 代表執行役社長 グループCEO)
「地政学・地経学リスクというと、過去にはテロを契機とした米国OFAC規制をはじめとする経済制裁規制強化があり、これには金融業界全体として体制整備等に尽力してきました。他方、最近の国際経済秩序の激動を見るに、そのリスクは非常に多岐にわたっており、一企業、一業界単位では太刀打ちできなくなる危機感を強く感じています。今こそ業界横断で、かつ産学官連携でスクラムを組んで世界の荒波に立ち向かう時だと確信し、その中心的役割をIOGに期待したいと思います。」
新浪剛史氏(サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長)
「国際関係における経済の重要性が急激に高まり、「地経学リスク」が全ての企業に顕在化し得る今日において、日本発で地経学に特化した独立系シンクタンクを日本中の経営者が待ち望んでいたと言っても過言ではないでしょう。「Chief Geoeconomics Officer」の人材育成に注力される点についても大いに期待しています。IOGを中心とした地経学コミュニティを強く大きく育て、日本経済の持続的発展に貢献すべく支援してまいります。」
森田隆之氏(日本電気株式会社 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO)
「世界が大きな変化に直面する今、我が国そして日本企業において地経学の視点から世界情勢を分析し行動する重要性がますます高まっています。一方、日本においてはこの視点での議論・研究はまだ端緒についたところであり、産学官の連携をもってこれに取り組むことが喫緊の課題です。また、サイバーセキュリティ、ネットワークなどの高度な技術力を保有することが国の国際競争力のみならず安全保障にも直結することから、技術視点での議論も欠かせません。当然ながら、こうした取り組みは国際協調の枠組みの中で進める必要があり、IOGの設立は、まさに時宜を得た取り組みといえます。本研究所がグローバルでもレスペクトされる存在となることを大いに期待し、支援してまいります。」
1 設立記者会見と国際戦略研究所(IISS)を招いてのイベント(7/26(火)開催)
2022年7月26日(火)、国際文化会館(東京都港区六本木5-11-16)で、13時から設立に関する記者会見を、14時から英シンクタンク・国際問題戦略研究所(IISS)から地経学部門ディレクター等をお招きしてのイベント「日英から見た経済安全保障(Economic Security from British and Japanese Perspective)」を行います。
2 地経学研究所設立記念シンポジウム
2022年9月下旬に国際文化会館にて、地経学研究所設立記念シンポジウムを開催します。
3 地経学研究所・会員の募集について
地経学研究所では、設立主旨に賛同してくださる法人を会員として募集しております。