ブルガリア総選挙 | 選挙イヤー2024

10月27日、ブルガリアにて3年間で7回目となる総選挙(一院制、定数240)が実施された。ブルガリアでは、2021年までボイコ・ボリソフ元首相が約10年間にわたり政権を担ってきたが、2021年以降、どの政党も過半数を獲得できておらず、政権が発足しないか、発足しても短命に終わることが多く、政治的に不安定な状況が続いている。こうした政治的な不安定さの背景には、経済成長や汚職対策における既存政党の行き詰まりや、極端な主張を掲げる新興政党の増加があるとされる。今回の選挙でも、ボリソフ元首相率いる中道右派政党「欧州発展のためのブルガリア市民」(GERB)が69議席を獲得し(1議席増)、2024年6月の前回総選挙と同様に第一党となったが、過半数には遠く及ばなかった。第二党のキリル・ペトコフ元首相率いる中道政党「我々は変化を続ける」(PP)を中心とする政党連合(PP–DB)は前回総選挙で大幅に減少した議席を回復できず、さらに2議席を減らして37議席の獲得にとどまった。また、「ブルガリア・ファースト」を掲げる新ロシア派政党「リバイバル(Revival)」は35議席を獲得し、前回に続いて第三党の座を維持し、ロシア・ウクライナ戦争の即時停戦を求める新政党「道徳、団結、名誉(MECh)」は12議席を獲得する躍進を見せた。ブルガリア国会の分断は今回の選挙を通じても解消されず、ボリソフ元首相の組閣へのハードルは依然として高い。組閣の失敗と度重なる総選挙の実施により、国民の既存政党への失望や不信が強まり、親ロ政党や極右政党への支持が拡大し、組閣がさらに難しくなるという悪循環が続いているといえる。
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石川 雄介 研究員/デジタル・コミュニケーション・オフィサー
専門はハンガリーを中心とした欧州比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。トランスペアレンシー・インターナショナル本部にて外部寄稿者・コンサルタントも務める。 トランスペアレンシー・インターナショナル ハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所にて、インターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)を経た後、2024年8月より現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。 主な著作に『偽情報と民主主義:連動する危機と罠』(共著、地経学研究所、2024年)、『EU百科事典』(分担執筆、丸善出版、2024年)、Routledge Handbook of Anti-Corruption Research and Practice(分担執筆、Routledge、2025年出版予定)などがある。
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研究者プロフィール
石川 雄介

研究員,
デジタル・コミュニケーション・オフィサー

専門はハンガリーを中心とした欧州比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。トランスペアレンシー・インターナショナル本部にて外部寄稿者・コンサルタントも務める。 トランスペアレンシー・インターナショナル ハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所にて、インターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)を経た後、2024年8月より現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。 主な著作に『偽情報と民主主義:連動する危機と罠』(共著、地経学研究所、2024年)、『EU百科事典』(分担執筆、丸善出版、2024年)、Routledge Handbook of Anti-Corruption Research and Practice(分担執筆、Routledge、2025年出版予定)などがある。

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