トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.9(2025年3月13日-3月18日)

研究員による解説(3/24追記)
「トランプ大統領はテロリズムに対抗し、国際貿易を保護している」
「ボイス・オブ・アメリカは過激な声を代弁する」
トランプ政権トラッカーの一覧(2025年1月20日~)
【一覧】トランプ政権トラッカー(大統領令・布告・覚書・発表)
この論考でわかること
  • 大統領令の一覧と概要
  • 布告・覚書・公式発表の一覧と概要
  • トランプ大統領の演説および優先政策
  • エキスパートの視点
Index 目次

大統領令一覧

連邦官僚機構の削減を継続する大統領令(3月14日)

この大統領令は、トランプ大統領自身が不要と判断した7つの政府系機関を挙げ、これらの機能と職員及び業務を最小限まで縮小するよう命じた。これらの機関による予算要求は、設定された「最小限の機能」を逸脱する場合拒否される。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

ポール・ワイス法律事務所によるリスクへの対応を命じる大統領令(3月14日)

この大統領令は、ポール・ワイス法律事務所とのあらゆる政府契約の見直し・終了、関係者のセキュリティクリアランス停止、関係者の連邦政府施設への立ち入り・政府職員との接触・政府機関への雇用を制限することを命じるもの。同事務所が司法手続きを弱体化させ、DEIを理由として差別を行っていることを理由としている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

前政権による有害な大統領令及び措置の追加的撤回を命じる大統領令(3月14日)

この大統領令は、前政権の政策を撤回する内容の大統領令(EO14148)で作成を命じたリストに基づき、バイデン政権時の大統領令・覚書を追加で18件撤回するもの。引き続きDEIやグリーン政策への批判的観点を持ちつつ、COVID19関連の措置、国防生産法に関する措置、労働者のエンパワーメントに関する措置などの一部撤回を行った。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

布告・覚書・公式発表一覧

2025年全国薬物中毒予防週間に関する布告(3月18日)

この布告は、有毒な製品や化学物質、薬物等による障害や死亡を防ぐため、また1961年の両院合同決議に基づき3月第3週を全国薬物中毒予防週間とするもの。またトランプ大統領は現在のフェンタニル等の脅威を訴え、薬物密輸に関わるカルテルのテロ組織認定など積極的に対応を行っていることを強調した。(布告はこちら

2025年 全国農業デーに関する布告(3月18日)

この布告は、農業が数世紀にわたってアメリカ経済の礎を支えてきたことに敬意を表し、3月18日を全国農業デーとするもの。またトランプ大統領は鳥インフルエンザの封じ込めに取り組んでいること、農業事業者の競争力強化に向けて取り組むことを強調した。(布告はこちら

「トランプ大統領は必要な経済救済策を実現している」(3月17日)

ホワイトハウスは、トランプ政権が規制緩和と積極的なエネルギー政策に転換したことによる恩恵を強調した。具体的には卵とガソリンの平均価格を挙げ、これらが3-4週間連続で下落しているとした。(詳細はこちら

「トランプ大統領はテロリストに裁きを、アメリカ人に安全を与える」(3月17日)

ホワイトハウスは、ギャング・カルテルメンバー追放の成果を挙げたうえで、様々な議員などからの称賛の声を紹介した。また即座の送還に反対した判事への批判の声も多く取り上げている。(詳細はこちら

ギャング組織「トレン・デ・アラグア」への対処の進捗に関する報道官声明(3月15日)

ホワイトハウスは、トレン・デ・アラグアの関係者を敵性外国人とし、裁判所の手続きなしに追放可能とする大統領令が発令された週末だけで、約300人のメンバーを拘束したと発表した。(詳細はこちら

アンドリュー・ジャクソン第7代合衆国大統領の誕生日に対する大統領メッセージ(3月15日)

トランプ大統領は、アンドリュー・ジャクソン第7代大統領を「人民の大統領」として功績をたたえ、その生誕258周年を祝した。声明の中でトランプ大統領は、ジャクソン大統領が官僚機構の縮小や関税適用を行い多くの批判に耐えたとし、これらを自らとの共通点として強調している。(詳細はこちら

■解説付き■ 「トランプ大統領はテロリズムに対抗し、国際貿易を保護している」(3月15日)

ホワイトハウスは、フーシ派の攻撃が米国と世界経済に与える悪影響に終止符を打つべくトランプ大統領が行動をとっていると説明した。また2023年以降フーシ派が米軍艦船を174回、民間船舶を145回攻撃しているとし、そのうち顕著な例を列挙した。(詳細はこちら

解説
トランプ米大統領は15日、イエメンで活動する親イラン武装組織フーシ派への武力攻撃を米軍に命令した。米軍の攻撃はイエメンの首都サヌアを含む広範な目標を対象としている。この声明はフーシ派による紅海やアデン湾での商船攻撃が米国経済や安全保障に深刻な影響を与え、航路が危険性が増大しアフリカ回りへの迂回が増加、これにより輸送コストが高騰し、インフレ率上昇を招いたとする。さらにトランプ政権はフーシ派を実質的に支援しているイランを名指しで非難している。トランプ大統領は対外軍事介入に消極的と見られてきたが、本年2月のソマリアにおけるイスラム国(IS)幹部を標的とした空爆の実施と、今回のフーシ派に対する軍事行動は今後の介入姿勢に対する重要な指標となりうる。(神保謙)

■解説付き■ 「ボイス・オブ・アメリカは過激な声を代弁する」(3月15日)

ホワイトハウスは、ボイス・オブ・アメリカが不正な組織であるとした。同組織が反トランプ的で親バイデン的、外国の意向に沿った報道を行ったなどと批判し、3月14日の大統領令で米国グローバルメディア局の縮小を命じたことで対処したと強調した。(詳細はこちら

解説
この声明文はトランプ政権が政府系メディア「Voice of America(VOA)」を解体する理由を示したものである。VOAが左派的バイアスを持ち、民主党寄りの報道姿勢を示していると批判している。具体的には、VOA記者がSNSで反トランプ発言を繰り返している点や、ハマスをテロリストと呼称しない方針、さらに「白人特権」や「トランスジェンダー難民」に関する報道を問題視している。また、一部職員が反米的プロパガンダを発信しているとの疑惑も挙げられた。トランプ政権はVOAを「アメリカの価値観を広めるためのメディア」として維持する意義を否定し、「反トランププロパガンダ」と見なして解体を決断した。米国が世界と価値を共有する長期的な方策は成果を挙げておらずエリートの無駄遣いの典型であり、短期的な成果こそ重視すべきとの「アメリカ・ファースト」の外交姿勢が背景にある。(神保謙)

ギャング組織「トレン・デ・アラグア」による侵略行為を鑑み、敵性外国人法を発動する布告(3月15日)

この布告は、2月にテロ組織認定をしたトレン・デ・アラグア(TdA)のメンバーを敵性外国人とし、米国内で逮捕・拘束・排除、また裁判所の手続きなしに追放を行うよう命じるもの。ベネズエラのマドゥーロ政権が南北アメリカの民主主義国家を不安定化させようとしており、その下でTdAが米国に対し非正規戦争を遂行している状況にあるとした。(布告はこちら

「第八週の勝利:トランプ政権が実現するアメリカの偉大さの証明」(3月14日)

ホワイトハウスは、トランプ政権第八週の成果について、インフレ抑制、不法移民減少、関税による投資や製造業誘致の成功、規制緩和、DEIやグリーン政策の撤回という面で継続していることを強調した。またウクライナや中東における安全保障面の取り組みも挙げた。(詳細はこちら

トランプ大統領とルッテNATO事務総長による会談前会見(3月13日)

トランプ大統領とルッテNATO事務総長は二者会談と会見に臨み、資金面でNATOを強化することなど安全保障政策の方向性を共にしていることを強調した。またその文脈でトランプ大統領は、ウクライナ停戦、グリーンランド及び北極圏における米国のプレゼンス強化、さらに中小の核保有国も含めた核軍縮、北朝鮮との関係再構築等へ意向をみせた。(詳細はこちら

研究活動一覧
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