トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.16(2025年4月30日-5月13日)

■解説付き■ 行政管理予算局、2026年度の簡易版予算案を発表(5月2日)
トランプ政権トラッカーの一覧(2025年1月20日~)
【一覧】トランプ政権トラッカー(大統領令・布告・覚書・発表)
Index 目次

大統領令一覧

中華人民共和国との協議を踏まえて相互関税率を改定する大統領令(5月12日)

この大統領令は、非対称な貿易慣行の是正に向けた米中間の協議結果を反映し、米国が中国からの輸入品に課す追加関税のうち24%分を90日間停止し、10%を維持することを命じている。また、合成オピオイド関連の少額輸入品にかかる関税率も120%から54%へと引き下げられる。これらの関税率の変更は2025年5月14日から適用される。(大統領令はこちら

米国患者へ最恵国待遇価格で処方薬を提供する大統領令(5月12日)

この大統領令は、製薬会社が海外市場での値引きを米国内の高薬価で補填している現状を問題視し、米国民が他の先進国と同様の「最恵国価格」で医薬品を入手できるようにすることを目的としている。関係省庁に対し、30日以内に製薬会社へ価格目標を提示し、必要に応じて規制改革や独占禁止法の適用など追加措置を講じるよう命じている。また、直接購入プログラムの導入も指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

退役軍人との約束を守り、戦士の自立のための全国センターを設立する大統領令(5月9日)

この大統領令は、特にホームレス退役軍人への支援を強化することを目的として、ロサンゼルスの退役軍人病院キャンパスに「戦士自立センター」を設立して必要な支援を提供するほか、バウチャーの配布や医療ケアの選択肢拡充など、退役軍人への支援を強化することを命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

連邦官報局の業務を効率化させる大統領令(5月9日)

この大統領令は、連邦規制の迅速な撤廃などを進めるため、米国立公文書館長に対し、システムの近代化や手続きの簡素化を図り、官報への文書掲載の遅延を最大限短縮すること、さらに掲載手数料を実費に基づき見直し、効率化による値下げを行うことを命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

連邦規制における過剰な刑事罰化に対抗する大統領令(5月9日)

この大統領令は、現在の米国の過剰規制が、米国民が知らぬ間に犯罪者になるリスクを高めているとして、連邦規制における過度な刑事罰、特にStrict Liability(過失の有無に関わらず有罪となる規制違反)について抑制的に対応するよう求め、また関係省庁に対して各規制違反に関する報告書を提出するよう命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

重要医薬品の国内製造を奨励するための規制緩和を命じる大統領令(5月5日)

この大統領令は、米国内で主要な医薬品のサプライチェーンを構築するため、国内製造者に対しては規制緩和を、外国主体にはその厳格化を命じるものである。食品医薬品局(FDA)や環境保護庁(EPA)には検査や認証における重複の排除や効率化が命じられ、行政管理予算局(OMB)の支援により機関間の許認可手続きが調整される一方、外国主体の製造施設にはより厳格な検査制度の策定や手数料の増額で対応する。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

バイオ研究における安全性とセキュリティの向上を命じる大統領令(5月5日)

この大統領令は、公衆衛生、安全保障、国家安全保障に影響を与えるバイオ研究の規制と制限を強化することを目的としている。具体的には、ウイルスの変異強化を伴う「機能獲得研究」について、外国の主体が実施するものや、安全体制が不十分な国で行われる研究への資金援助を全面的に停止する措置を命じている。また、米国内では、適切な規制や監視体制が整備されるまで、これら高リスクな研究の一時停止を指示した。さらに、今後は、科学技術政策局長、国家安全保障担当大統領補佐官、保健福祉長官らが協力し、ガイドラインの策定や規制の見直しを行う予定である。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら

「偏向メディア」に対して納税者が負担している補助金を廃止する大統領令(5月1日)

この大統領令は、「偏向的」な公共メディアへの政府による資金提供はジャーナリズムの独立性を損なうとして、NPR(米国公共ラジオ放送、旧ナショナル・パブリック・ラジオ)やPBS(公共放送サービス)といった公共放送への資金提供を全面的に停止し、納税者の負担軽減と報道の中立性確保を目指している(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら

宗教の自由委員会の設立を命じる大統領令(5月1日)

この大統領令は、信教の自由がアメリカ建国の礎にあることを再確認し、これを促進するために「宗教の自由委員会」の設置を命じるものである。委員会は司法長官のほか民間セクターや教育機関、宗教団体などから幅広いメンバーで構成され、宗教の自由における現状や提言を含む報告書の作成を行う。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら、指名委員の発表はこちら

布告・覚書・公式発表一覧

「4年ぶりの安値へ:生活必需品価格が下落したことで、労働者はトランプ経済に安心感」(5月13日)

ホワイトハウスは、インフレ率がこの4年で最低の水準に達したとし、政権の政策の正当性を強調した。具体的には食料品やガソリンといった必需品の価格低下のほか、賃金の上昇を挙げた。(覚書はこちら

「リヤドにて、トランプ大統領は中東の輝かしい未来への道筋を照らした」(5月13日)

ホワイトハウスは、トランプ大統領がリヤドで行った演説の要点をまとめ、中東に向けたメッセージとして紹介した。トランプ大統領はこれまでの「西側の介入」を批判する一方で中東の人々の主体性を尊重する旨発言したほか、平和やパートナーシップを強調し、フーシ派への圧力の成果にも言及した。(覚書はこちら

ファクトシート:トランプ大統領、サウジアラビアで過去最大規模、総額6000億ドルの投資を確保(5月13日)

ホワイトハウスは、トランプ大統領がリヤドを訪問して合意を得た一連の投資計画を公表した。先端技術分野やインフラを中心に相互の投資が拡大するほか、米国展開を主軸とするセクター別ファンドを含む投資パートナーシップが開始する。さらに安全保障面でも、米国の防衛産業による先端装備やサービスの販売、能力構築支援などを含む過去最大規模の協定が結ばれた。(詳細はこちら

2025年 警察官・治安職員(Peace Officers)記念日と警察週間に関する布告(5月12日)

ホワイトハウスは、治安維持に尽力する全国の警察官を称え、殉職者を追悼するために、2025年5月15日を「保安官記念日」、5月11日から17日を「警察週間」に定めると宣言した。(覚書はこちら

ジュネーヴにおける米中経済・貿易会合に関する共同声明(5月12日)

ホワイトハウスは、中国との貿易交渉で、双方が関税を115%引き下げることで合意したと発表した。米国は、4/2付の大統領令14257に基づく対中追加関税のうち24%(中国に対して示された34%のうち一律関税10%を除く数字)を90日間停止し、基本関税率の10%は維持する。4/8付の大統領令14259(34%から84%まで引き上げ)および4/9付の大統領令14266(84%から125%へ引き上げ)で命じた追加関税分は撤廃する。中国側も同様に、24%分を90日間停止し、10%は維持、その他は撤廃する。両国は、今後も経済・貿易関係に関する協議を継続していくとした。(共同声明はこちら、ファクトシートはこちら、宣伝記事はこちら

「米国、ジュネーヴで中国との貿易合意を発表」(5月11日)

米国財務長官スコット・べッセントは、ジュネーヴで開催された中国との貿易交渉で大きな進展があったことを報告し、スイス政府の支援に感謝を述べた。また米国通商代表ジャミソン・グリア大使は、短期間で合意に達したことを強調した。(覚書はこちら

「第16週の勝利:トランプ大統領、アメリカの新たな黄金時代を前進させる」(5月9日)

ホワイトハウスは、トランプ政権第16週の成果として、市場アクセスの拡大や非関税障壁の削減を盛り込んだイギリスとの画期的な貿易協定の発表、製造業復活に向けた米国への投資の着実な増加、さらに航空管制システムの改革などを挙げ、これらを強調している。(覚書はこちら

不要な水圧基準を撤廃する覚書(5月9日)

この覚書は、水回りの規制や基準が消費者の生活を不便にし、コストを増加させているとして、エネルギー省に対し現行の水やエネルギー効率関連基準の撤廃や法定基準への戻しを検討するよう指示するとともに、他の関係省庁に対しても、60日以内に1992年のエネルギー政策法の改廃を含む提案を準備し、提出するように命じている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら

外来種のコイから五大湖を保護する覚書(5月9日)

この覚書は、アジア原産の外来種コイが五大湖の生態系や経済に深刻な脅威をもたらす恐れがあるとして、内務長官、商務長官、陸軍長官、環境保護庁長官に対し、五大湖流域およびその周辺地域における外来コイの移動と拡散を防ぐため、最も効果的な障壁や対策を速やかに特定・実施すること、さらにBrandon Road Interbasin Projectを遅滞なく推進することを命じている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら

2025年 軍人配偶者の日に関する布告(5月9日)

この布告は、軍人配偶者が頻繁な配置換えや別居、孤独な育児など困難な状況に直面しながら、米軍の士気や即応体制の維持に大きく貢献しているとして、その献身に感謝し、2025年5月9日を「軍人配偶者の日」と定めることを宣言している。(覚書はこちら

2025年 母の日に関する布告(5月9日)

この布告は、すべての母親の無償の愛と献身に感謝し、2025年5月11日を「母の日」と定めることを宣言している。(覚書はこちら

プロジェクト・ホームカミングの設立を指示する布告(5月9日)

この布告は、不法移民の国外退去を促進するために「プロジェクト・ホームカミング」を創設し、米国を自主的に退去する不法移民に対して連邦政府が航空券費用や出国奨励金(exit bonus)などの金銭的支援を行う方針を示した。退去しなかった者には、強制送還、起訴、収監、罰金、さらに財産や給与の差し押さえなどの厳しいペナルティを科すとしている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら

「米英貿易合意」(5月8日)

ホワイトハウスは、トランプ米大統領とスターマー英首相が米国・英国経済繁栄協定(EPD)の一般原則に合意したと発表した。この協定は法的拘束力を持たない枠組みであり、貿易の拡大、障壁の撤廃、公平で相互的かつ未来志向の米英関係の構築を目的としている。両国は、関税、非関税障壁、デジタル貿易、経済安全保障、商業機会、その他の項目について直ちに交渉を開始し、提案を具体化する予定である。今回の発表では、米国が英国からの自動車輸入に対して10%の関税率で年間10万台の輸入枠を設定する方針や、英国の米国産牛肉およびエタノールに対する関税撤廃や無税輸入枠の設定などが示された。今後、医薬品や航空宇宙分野などにおいても、さらなる交渉が進められる見通し。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら

2025年 第二次世界大戦勝利記念日に関する布告(5月8日)

この布告は、第二次世界大戦における連合国の勝利とヨーロッパでの戦争終結から80周年を迎えたことを記念し、2025年5月8日を「2025年 第二次世界大戦勝利記念日」と定めるものである。また、これからも力による平和を追求し、果てしなく続く海外での戦争を終わらせる決意を示している。(詳細はこちら

2025年 全米里親月間に関する布告(5月7日)

この布告は、家庭に子どもを受け入れる里親たちの献身に敬意を表し、2025年5月を「全米里親月間」と定めている。(詳細はこちら、関連記事はこちら

「果たされた約束:トランプ大統領がアメリカ人の帰国を実現」(5月6日)

ホワイトハウスは、トランプ政権発足以降47名のアメリカ国民が海外での拘束状態から解放され帰国したとし、「アメリカの力強さ」を強調した。例として、ロシアで拘束されたバレエダンサーや教師、またハマスやタリバンの人質になっていた人々が解放された様子を紹介した。(詳細はこちら

「トランプ効果:第二次トランプ政権下で進行中の新規投資案件リスト」(5月6日)

ホワイトハウスは、あらゆる分野において投資案件が増加し続けているとして、主要なと投資案件のリストを更新した。国内の事業者に加え、欧州や日本をはじめとした世界中あらゆる分野の企業が米国内で製造拠点の新設や生産の増加を進めていると説明している。(詳細はこちら

2025年 全国中小企業週間の布告(5月6日)

この布告は、米国経済において中小企業が果たす役割を称え、5月4日から5月10日までを「全国中小企業週間」と宣言するものである。また中小企業がグローバル化や規制などによって不利益を被ってきたとし、政権の関税政策や規制緩和が支援策になることを強調した。(詳細はこちら

2025年 全国ハリケーン対策週間の布告(5月5日)

この布告は、シーズンが近づくハリケーンの危険性について認識を高めつつ備えの徹底を促すため、5月4日から5月10日までを「全国ハリケーン対策週間」と宣言するものである。また政権が地方への権限移譲や資源・制度の効率化などによって災害への体制を強化していることも強調した。(詳細はこちら

2025年 全国メンタルヘルス啓発月間の布告(5月5日)

この布告は、5月をメンタルヘルス啓発月間とし、精神疾患が誰にでも起こりうるとして理解や共同対処を促すものである。また政権が「アメリカを再び健康にする委員会」を通じて健康問題に取り組んでいることを強調し、PTSDなどを抱える人々にも寄り添う姿勢をみせた。(詳細はこちら

「トランプ大統領はアメリカ国民が得た勝利を強調し、これからの100日に道筋をつける」(5月4日)

ホワイトハウスは、独占インタビューの中でトランプ大統領が語った成果の振り返りと政権の優先事項を概説した。国境管理への断固たる姿勢や、貿易政策などにおけるアメリカの利益追求、またイランやウクライナといった国外の問題に対する考えを強調した。(詳細はこちら

「第15週の勝利:トランプ大統領就任100日目も多くの成果で彩られた」(5月4日)

ホワイトハウスは政権第15週目の成果として、予想を上回る雇用の増加や製造業の国内回帰を筆頭に、不法移民の排除、ウクライナや中東等における「力による平和」の促進、その他幅広い分野の取り組みを挙げた。(詳細はこちら

■解説付き■ 行政管理予算局、2026年度の簡易版予算案を発表(5月2日)

ホワイトハウスは、2026年度の簡易予算案を公表した。非防衛分野の裁量的支出を前年度比で23%削減する一方、国防費を13%増、国土安全保障費を65%増とする内容で、「アメリカ第一」を強調する予算案となっている。(詳細はこちら

解説
2026会計年度の米連邦政府の予算要求の「簡易版」(skinny budget)が公表され、国防予算は1兆119億ドル(13.4%増)、非国防予算は6012億ドル(16.6%減)とされた。非国防予算のうち、特に気候変動対策や対外援助、科学関連の予算が大幅に削減される提案となっており、国務省(USAID含む)、海洋大気庁(NOAA)、環境保護庁(EPA)、国立科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)などが主な削減対象となっている。個別の政策やプログラムに関しては、5月下旬以降に公表される予定の予算要求の「詳細版」を待つ必要があるが、この段階の予算案からも、国防や国境管理の強化を重視し、気候変動や対外援助を削減するという、第2次トランプ政権の「米国第一主義」の方針が表れていることを読み取ることができる。ただし、連邦政府の予算は議会での立法(主に歳出法)を通じて成立するものであり、今後の審議過程で大幅な修正を受ける可能性がある。現在、上下両院ともに共和党が多数派となっているものの、上院歳出委員会のコリンズ委員長(共和党、メイン州選出)は今回の予算要求に対して「重大な反対」を表明しており、今後の議会での議論を注視する必要がある。(梅田耕太)

「トランプ政権が国内の鉱物生産を加速-重要鉱物生産プロジェクトが新たに10件、連邦政府の許認可リスト入りへ」(5月2日)

ホワイトハウスは、3/20付の「米国の鉱物生産を迅速に増加させるための大統領令」に基づき、第二弾となる重要鉱物プロジェクトについて発表した。これは4/18発表の第一弾に続くもので、今回新たに発表された10件についても、透明性が高く迅速な審査が行われる予定。また、さらなるプロジェクトの発表が今後も続くとされている。(詳細はこちら

「トランプ効果:メルセデス・ベンツは米国における車両生産をさらに増加」(5月1日)

ホワイトハウスは、メルセデス・ベンツが米国拠点で製造する車種を新たに追加する発表を製造業再興の成果として紹介した。また、日本企業を含む著名な自動車メーカーが製造・生産を米国内への移管を進めていることを強調した。(詳細はこちら

ファクトシート:トランプ大統領、米-ウクライナ復興投資基金設立に向け合意(5月1日)

ホワイトハウスは、米国とウクライナの間で、長期的なウクライナの復興及び投資に関するパートナーシップ形成で合意したことを発表した。パートナーシップでは双方が利益を得ることが強調され、鉱物・炭化水素・その他インフラ開発を含む天然資源プロジェクトによる利益の50%を復興投資基金に割り当てること、両国の協力の上でパートナーシップ運営が行われていくことが示された。またロシアの軍事力に対し協力を行ったあらゆる主体は復興への参画を拒否されることが強調され、米国がロシアに対し強いメッセージを送っていると明記した。(詳細はこちら

ホワイトハウス環境諮問委員会が許認可イノベーションセンターを設立(4月30日)

ホワイトハウス環境諮問委員会は、連邦政府のインフラ事業の環境審査・許認可手続きを効率化するため、「許認可・審査イノベーションセンター」の設立を命じる覚書を発表した。これは、4/15付の「許認可・審査技術を21世紀に適した形へアップデートさせるための覚書」に基づく取り組みの一環である。

研究活動一覧
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