モルドバ議会選挙:大統領選に続く親欧米派の勝利

9月28日、モルドバで一院制議会(任期4年・定数101、比例代表制)の選挙が実施され、マイア・サンドゥ大統領率いる親欧米派の「行動連帯党(PAS)」が…(以下に続きます)
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9月28日、モルドバで一院制議会(任期4年・定数101、比例代表制)の選挙が実施され、マイア・サンドゥ大統領率いる親欧米派の「行動連帯党(PAS)」が55議席(前回比8議席減)を獲得し、第一党となった。親ロシア派の野党連合「愛国者ブロック(BEP)」の議席は26議席(前回比6議席減、第二党)にとどまった。

第三党としては、新たに設立された政治ブロック「オルタナティブ」が8議席を獲得。同ブロックは表向きには親欧州を掲げているが、実際にはEU加盟プロセスの内部からの遅延を狙っているのではないかとの指摘もある。加えて、親ロシア派の「私たちの党(PN)」と、ルーマニアとの統一を主張する「民主主義を家庭に(PPDA)」も5%の阻止条項を突破し、それぞれ6議席を獲得した。

前回の大統領選挙と同様に、同国の不安定化やEU加盟の妨害を狙って、今回の選挙でもロシアからの偽情報の拡散やサイバー攻撃、大規模な票の買収、反政府デモの扇動、一部の親ロシア政党への資金援助などを行ったとの指摘が相次いでいる。これに対し、親ロシアの立場を取り、欧州統合に懐疑的なメディアは一連の指摘を否定し、ロシア国内における在外投票所の少なさや一部極右政党の立候補禁止措置を批判し、今回の選挙は「盗まれた選挙」「汚い選挙」「独裁的」であったと主張している。PASは議席上では多数派を維持したものの、情報空間におけるモルドバの民主主義へのロシアの干渉は続いているとされる。

今後は、サンドゥ大統領が制度改革を主導し国民の信頼を確保できるか、またEU側がモルドバの加盟プロセスを着実に前進させられるかが問われる。現在、モルドバのEU加盟手続きは、ハンガリーがウクライナのEU加盟交渉の進展を阻止している影響で停滞しており、両国の交渉プロセスを切り離すか否かが今後の一つの大きな焦点となろう。

選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義

選挙による国内政治のダイナミクスの変化は世界政治に影響を与え、地政学・地経学上のリスクを生じさせる可能性があります。また、報道の自由の侵害や偽情報の急増など、公正な選挙の実施に対する懸念が高まっているなか、今後の民主主義の行方が注目されています。本特集では、各国の選挙の動向を分析するとともに、国内政治の変化が国際秩序に与える影響についても考察していきます。

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石川 雄介 研究員/デジタル・コミュニケーション・オフィサー
専門はハンガリーを中心とした中・東欧比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。埼玉学園大学経済経営学部非常勤講師、EUROPEUM欧州政策研究所アソシエイト・リサーチ・フェロー(チェコ)、国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)外部寄稿者も兼職。 TIハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所でのインターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)やEUROPEUMでの訪問研究員を経た後、現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。 主な著作に『偽情報と民主主義:連動する危機と罠』(共著、地経学研究所、2024年)、『EU百科事典』(分担執筆、丸善出版、2024年)、Routledge Handbook of Anti-Corruption Research and Practice(分担執筆、Routledge、2025年)などがある。 【兼職】 埼玉学園大学経済経営学部非常勤講師(秋学期担当、欧米経済事情、2単位) Visiting Research Fellow, EUROPEUM Institute for European Policy External contributor, Anti-Corruption Helpdesk, Transparency International Secretariat (TI-S)
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研究者プロフィール
石川 雄介

研究員,
デジタル・コミュニケーション・オフィサー

専門はハンガリーを中心とした中・東欧比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。埼玉学園大学経済経営学部非常勤講師、EUROPEUM欧州政策研究所アソシエイト・リサーチ・フェロー(チェコ)、国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)外部寄稿者も兼職。 TIハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所でのインターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)やEUROPEUMでの訪問研究員を経た後、現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。 主な著作に『偽情報と民主主義:連動する危機と罠』(共著、地経学研究所、2024年)、『EU百科事典』(分担執筆、丸善出版、2024年)、Routledge Handbook of Anti-Corruption Research and Practice(分担執筆、Routledge、2025年)などがある。 【兼職】 埼玉学園大学経済経営学部非常勤講師(秋学期担当、欧米経済事情、2単位) Visiting Research Fellow, EUROPEUM Institute for European Policy External contributor, Anti-Corruption Helpdesk, Transparency International Secretariat (TI-S)

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