EUの「ウクライナ支援」継続に立ちはだかる課題 - 国家間の世界観の相違と市民の間で進む関心低下

2023年3月21日、岸田文雄首相はウクライナを訪問しゼレンスキー大統領との会談を行った。会談後には「ウクライナに平和が戻るまで日本は支援を続ける」と表明し、「G7広島サミットで、G7として一致して明確なメッセージを発することができるよう準備を進めていきたい」と述べた。岸田首相は、G7としてのウクライナ支援における結束の重要性を改めて強調した。
5月に開催されるG7サミットは日本が議長国として主催することになるが、開催にあたっては欧州の立場を理解しておくことが重要となる。G7には7カ国の首脳に加えてEU首脳(欧州委員会委員長と欧州理事会議長)も参加しており、彼らを含めると首脳9人のうち6人は欧州からの指導者だからである。
欧州におけるウクライナ支援の重要な担い手として、欧州連合(EU)は継続的にウクライナへの支援を続けている。しかし同時に、EUはあるべき国際秩序観についての指導者の結束の乱れや欧州市民のロシア・ウクライナ戦争への関心の低下といった脆さも抱えている。本稿では、そうしたEUのウクライナ支援における光と陰の両方を踏まえたうえで、EUの今後の舵取りのあり方について考えてみたい。
ウクライナ支援の継続とその理由
支援策に対する不満の蓄積?
市民の戦争への関心低下も
「戦争の終結と国際情勢は、世界が注目してくれるかどうかにかかっている」
求められる「丁寧」かつ「大胆」な政策決定と共同声明

地経学ブリーフィング
コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを精査することを目指し、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)のシニアフェロー・研究員を中心とする執筆陣が、週次で発信するブリーフィング・ノートです(編集長:鈴木一人 地経学研究所長、東京大学公共政策大学院教授)。
おことわり:地経学ブリーフィングに記された内容や意見は、著者の個人的見解であり、公益財団法人国際文化会館及び地経学研究所(IOG)等、著者の所属する組織の公式見解を必ずしも示すものではないことをご留意ください。


研究員,
デジタル・コミュニケーション・オフィサー
専門はハンガリーを中心とした中・東欧比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)にて外部寄稿者も兼職。 TIハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所にて、インターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)を経た後、2024年8月より現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。 主な著作に『偽情報と民主主義:連動する危機と罠』(共著、地経学研究所、2024年)、『EU百科事典』(分担執筆、丸善出版、2024年)、Routledge Handbook of Anti-Corruption Research and Practice(分担執筆、Routledge、2025年出版予定)などがある。 【兼職】 External contributor, Anti-Corruption Helpdesk, Transparency International Secretariat (TI-S)
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