選挙解説(オーストリア総選挙)

【解説】9月29日に行われオーストリア総選挙では、極右の自由党(FPÖ)が29.1%の支持を獲得し、ネハンマー首相率いる中道右派の国民党(ÖVP)を僅差で破り第一党となった。自由党は反移民を掲げるとともに、エリートが市民の望まない政治を行っていると訴えており、こうした主張が現状打破を望む有権者からの支持につながった可能性が高い。自由党は1950年代に元ナチス党員らが設立した政党であり、極右政党の中でも長い歴史を持つ。過去には国民党と連立政権を組んだこともある。しかし、国政選挙における第一党の座の獲得は今回が初めてであり、欧州議会選に続く二回連続の自由党の勝利は、大連立を組むことも多かった伝統的政党である国民党(ÖVP)と社会民主党(SPÖ、中道左派)に対して主要政党としての存在感を見せつけるとともに、EU政治において連携を強めるハンガリーのフィデスやチェコのANOなどの欧州懐疑派政党を勢いづける結果となった。

いずれの政党も過半数を得ることが出来なかったため、今後は連立交渉が行われることになるが、交渉においては第二党となった国民党が連立の鍵を握っている。国民党は、移民政策などにおいて自由党と比較的近い政策を掲げ、自由党のハーバート・キックル党首の首相就任に対しては拒否する意向を示しているものの、連立の可能性については排除していない。国民党が、自党よりも議席数が少ない社会民主党や緑の党との連携により自由党を排除するのか、それともキックル党首の首相就任を回避しつつ自由党との連携を模索するのかが今後の注目点となろう。(石川雄介)

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(Photo Credit: Shutterstock)


 
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石川 雄介 研究員/デジタル・コミュニケーション・オフィサー
専門はハンガリーを中心とした欧州比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。トランスペアレンシー・インターナショナル本部にて外部寄稿者も務める。 トランスペアレンシー・インターナショナル ハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所にて、インターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)を経た後、2024年8月より現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。
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研究者プロフィール
石川 雄介

研究員,
デジタル・コミュニケーション・オフィサー

専門はハンガリーを中心とした欧州比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。トランスペアレンシー・インターナショナル本部にて外部寄稿者も務める。 トランスペアレンシー・インターナショナル ハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所にて、インターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)を経た後、2024年8月より現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。

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