解説 クロアチア大統領選挙(2025年1月12日)
ミラノビッチ大統領は、外務省出身で、大統領就任以前は社会民主党に所属していた。2011年から2016年までクロアチア首相を務め、EU加盟を実現させた立役者である一方で、ウクライナへの軍事支援やウクライナのEU加盟に対して否定的な姿勢を示していることでも知られている。大統領は軍の最高司令官を務めるが、2000年の憲法改正以降の権限は外交安全保障分野での発言権に限定され、法案拒否権や実質的な議会解散権を持たない儀礼的な役職とされている。クロアチア政治の実権を握るプレンコビッチ首相はウクライナ支援に賛成していることから、今回の選挙がクロアチア外交に及ぼす影響は小さいと考えられるものの、再選を果たしたミラノビッチ大統領との外交政策をめぐる緊張関係は今後も続くことが予想される。(石川雄介)
選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義
選挙による国内政治のダイナミクスの変化は世界政治に影響を与え、地政学・地経学上のリスクを生じさせる可能性があります。また、報道の自由の侵害や偽情報の急増など、公正な選挙の実施に対する懸念が高まっているなか、今後の民主主義の行方が注目されています。本特集では、各国の選挙の動向を分析するとともに、国内政治の変化が国際秩序に与える影響についても考察していきます。
研究員,
デジタル・コミュニケーション・オフィサー
専門はハンガリーを中心とした欧州比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。トランスペアレンシー・インターナショナル本部にて外部寄稿者・コンサルタントも務める。 トランスペアレンシー・インターナショナル ハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所にて、インターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)を経た後、2024年8月より現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。 主な著作に『偽情報と民主主義:連動する危機と罠』(共著、地経学研究所、2024年)、『EU百科事典』(分担執筆、丸善出版、2024年)、Routledge Handbook of Anti-Corruption Research and Practice(分担執筆、Routledge、2025年出版予定)などがある。
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