トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.5(2025年2月12-18日)

・国家エネルギー支配評議会の設立に関する大統領令
・相互貿易と関税に関する覚書
トランプ政権トラッカーの一覧(2025年1月20日~)
・【一覧】トランプ政権トラッカー(大統領令・布告・覚書・発表)
- 大統領令の一覧と概要
- 布告・覚書・公式発表の一覧と概要
- トランプ大統領の演説および優先政策
- エキスパートの視点
大統領令一覧
全機関の説明責任確保に関する大統領令(2月18日)
この大統領令は、過去の政権下で独立規制機関が大統領の監督を受けずに運営されていたことを批判し、今後大統領の統制とアメリカ国民への説明責任を確保するために、全ての行政機関(独立機関を含む)に対し、重要な措置を大統領府内の情報・規制業務局(OIRA)に提出し、審査を受けるよう指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
体外受精(IVF)へのアクセスを拡大する大統領令(2月18日)
この大統領令は、体外受精(IVF)への信頼できるアクセスを確保し、不必要な規制を緩和するために、大統領補佐官に対し、IVFへのアクセス保護と自己負担軽減のための政策提言を提出するように命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
教育の継続的なアクセス確保とCOVID-19ワクチン義務の終了に関する大統領令(2月15日)
この大統領令は、教育機関におけるCOVID-19ワクチンの接種義務を廃止するため、関係省庁に計画の策定を指示し、この方針に従わない教育機関への連邦資金の支出を制限するよう命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
■解説付き■ 国家エネルギー支配評議会の設立に関する大統領令(2月14日)
この大統領令は、アメリカのエネルギー生産を最大化するために、National Energy Dominance Council (国家エネルギー支配評議会)を設立し、大統領に対して規制緩和やエネルギー生産計画に関する助言を行うよう指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
解説
この大統領令は、内務長官が議長を務め、閣僚やホワイトハウスの主要顧問を含む国家エネルギー支配評議会(NEDC)を設立することを目的とする。エネルギー戦略を米国の戦略的優先事項と整合させるため、内務長官は国家安全保障会議メンバーに昇格することとなった。NEDCの任務は、「インフレを抑えるために信頼性が高く手頃なあらゆる形態のエネルギー生産を拡大する」ことに加え、米国経済の成長、雇用創出、米国製造業のリーダーシップの再構築、AIにおける世界での主導力、そして「世界中の戦争を終結させる」を目的とする米国の商業的および外交的手段を駆使した「強さを通じた平和の回復」である。主な焦点は石油とガスだが、NEDCはウラン、バイオ燃料、地熱、および重要鉱物の発見と使用を拡大する任務も負っている。NEDCは規制を緩和し、民間部門のエネルギー投資を促進する「国家エネルギー優位戦略」を100日以内にトランプ大統領に提出する。これはトランプ政権の経済計画の重要な柱であり、米国の外国エネルギー輸入への依存を減らし、経済を成長させ、財政赤字と債務の削減を可能にする。エネルギーコストの低減はトランプ氏がインフレ抑制のために用いる重要な方法の1つ。同時に、国家安全保障への影響も同様に興味深い。トランプ氏は米国の同盟国が米国の石油とガスをより多く購入することを望んでおり、また、ウクライナ戦争を終結させるために、より安価なエネルギー価格をロシアに対するレバレッジとして利用することを望んでいる。しかしそれは、より安価なエネルギーは中国に利益をもたらし、モスクワと北京の間に亀裂を生じさせようとするトランプ氏の戦略に影響を与える可能性がある。(アンドリュー・カピストラノ)
「アメリカを再び健康にする委員会」を設立する大統領令(2月13日)
この大統領令は、アメリカ国内における(特に子どもの)健康危機に対処するため、「アメリカを再び健康にする委員会(Make America Healthy Again Commission)」を設立し、現状の分析や解決策の提案を指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
アメリカ外交における統一方針に関する大統領令(2月12日)
この大統領令は、アメリカ憲法第2条に基づき、外交政策の実施権限が大統領に属することを明確化し、すべての外交関係者が大統領の指示と権限のもとで行動することを義務付ける。大統領の政策を忠実に実施しない場合、職務上の懲戒処分の対象となり、免職を含む措置が取られる。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
無駄な支出に関する徹底的な透明性:行政各部門および機関の長宛ての覚書(2月18日)
この覚書は、米国政府がこれまで国民の利益にならないプログラムや契約、助成に過剰な支出をしていたと批判し、米国民がこれらの無駄な支出を知る権利があるとして、各部門および機関の長に対し、廃止された全てのプログラムや契約、助成金などの詳細を可能な限り最大限公開するよう命じている。(覚書はこちら、ファクトシートはこちら)
ジョージ・ワシントン大統領の誕生日を祝福する布告(2月17日)
この布告は、2025年2月17日を米国初代大統領ジョージ・ワシントンの誕生日として記念し、その功績を讃えるために発表されたもの。(詳細はこちら)
「トランプ効果」は止まらない(2月17日)
2月17日、ホワイトハウスはトランプ政権のこれまでの成果の一部について、Fox NewsやBreitbart Newsの記事などへのリンクを用いて紹介した。(詳細はこちら)
「トランプ大統領のもと、勝利は続く」(2月14日)
2月14日、ホワイトハウスはトランプ政権の就任以来の主な成果を列挙した声明を公表し、国内外における政策の成功を強調した。(詳細はこちら)
■解説付き■ 相互貿易と関税に関する覚書:財務長官、商務長官、国土安全保障長官、予算管理局長、米国通商代表、経済政策担当大統領補佐官、貿易および製造業担当大統領上級顧問宛て(2月13日)
この覚書は、アメリカの貿易赤字の削減と非対称的な貿易関係の是正のため、各省庁のトップに対し、相互関税の導入を検討し、各貿易相手国に対する調査を行うように指示している。(覚書はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
解説
トランプ大統領は2月13日に大統領覚書を発出。米国は貿易相手国の不公正で非相互的な貿易政策により被害を受け、貿易赤字が発生しているとの認識を示した上で、商務長官と米通商代表部代表に対して、貿易をより「公正で相互的」なものとするよう計画の策定を指示している。本覚書は、あくまで調査および計画の策定を指示するもので、具体的な内容は今後検討されるが、対応策として相互的な関税を用いることは覚書に明記されている。
同時に出されたファクトシートにおいては、ブラジルのエタノール、インドのモーターバイク、EUの貝や甲殻類と自動車、カナダとフランスのデジタル・サービス課税、などが不公正な貿易政策として例示されている。日本への特段の記載はないが、覚書本体には非関税障壁も非相互的な貿易政策に該当する旨が記載されている。
本覚書は、(i)発想の基点が「二国間の貿易収支」であること、(ii)相互性の判断が米国によって一方的になされること、など問題が多い。輸入品への付加価値税賦課を不公正とみなしている点も、WTOルールと異なる独自の解釈。ルールに基づく国際貿易レジームを弱める措置となる可能性が高く懸念される。(EUは早速2月17日に反論を公表している。Questions and Answers on the US reciprocal tariff policy(大矢伸)
トランプ政権からのメッセージ:「法を順守せよ。」(2月13日)
トランプ政権は、「法を順守せよ」と題した発表をホワイトハウス公式サイトに掲載し、法令を守らない各州や団体への対応として、不法移民問題やDEI政策の廃止などに関する具体的な措置を紹介した。(詳細はこちら)
日印首脳会談(2月13日)
米国現地時間2月13日、インドのモディ首相とトランプ大統領は会談を実施し、共同声明を発表した。声明では、米国によるインド向けの防衛装備の販売や共同生産、石油・天然ガスの輸出強化が打ち出されたほか、二国間貿易イニシアチブ(BTI)の交渉開始への合意や、宇宙・先端技術分野における協力の強化も確認された。(共同声明はこちら)
連邦政府の不正支出に関する報道関係者向けの声明(2月12日)
「連邦政府の支出における不正」の証拠がないとするニューヨーク・タイムズの報道を批判し、会計監査院(GAO)の報告を引用して毎年2,330億~5,210億ドルが不正に失われていると主張している。(詳細はこちら)