トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.8(2025年3月4日-3月12日)

・戦略的ビットコイン準備金および米国デジタル資産備蓄を設立する大統領令
トランプ政権トラッカーの一覧(2025年1月20日~)
・【一覧】トランプ政権トラッカー(大統領令・布告・覚書・発表)
- 大統領令の一覧と概要
- 布告・覚書・公式発表の一覧と概要
- トランプ大統領の演説および優先政策
- エキスパートの視点
大統領令一覧
学生ローン免除プログラム(PSLF)を復活させる大統領令(3月7日)
この大統領令は、学生ローン免除プログラム(PSLF)の改革を命じるものである。前政権の免除制度の濫用を批判し、さらに一部の非営利団体が違法行為に関与し国家安全保障を損ねているとして、そのような団体の職員をPSLFの対象から除外するよう指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
2026年FIFAワールドカップに向けたホワイトハウスタスクフォースを設立する大統領令(3月7日)
この大統領令では、2026年に米国で開催予定のFIFAワールドカップが、アメリカ合衆国建国250周年と重なる重要な機会であることを踏まえ、国の誇りやホスピタリティを示し、経済成長や観光振興につなげるため、その成功に向けたタスクフォースをホワイトハウス内に設立することを指示している。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
■解説付き■ 戦略的ビットコイン準備金および米国デジタル資産備蓄を設立する大統領令(3月6日)
この大統領令は、暗号資産の代表とされるビットコインを戦略的に活用するため、刑事・民事手続きを経て没収したビットコインを管理する「戦略的ビットコイン準備金」の設立と、ビットコイン以外を含む暗号資産を管理するための「米国デジタル資産備蓄」の設立を命じている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
解説
この大統領令は、米国を仮想通貨の国際的リーダーとして位置付けるデジタル資産戦略の策定を目的としている。まず、ビットコインを準備資産として扱う戦略的ビットコイン準備金を設立する。財務省は、民事および刑事訴訟での資産没収の結果として約 20 万ビットコインを保有しており、それらを準備金の資本に当てる。また、他の連邦機関は、保有するビットコインを準備金に移す法的権限があるかどうかを判断するよう命じられている。これらのビットコインは準備資産としてのみ保有され、市場で販売されることはないが、財務省と商務省は追加のビットコインを取得するための「予算中立戦略(政府のビットコイン購入による価格変動を他の資産の売却で中和する)」を評価する。次に、この大統領令は、ビットコイン以外の仮想通貨用の米国デジタル資産備蓄を設立する。戦略的ビットコイン準備金とは異なり、政府は追加の資産を取得する予定はなく、この備蓄は資産没収のみを通じて資本化される。準備金と備蓄は、ビットコイン準備金を創設した最初の国であるという戦略的優位性を生かし、「仮想通貨管理のギャップを埋める」ことを目的としている。トランプ大統領の2024年の選挙運動では、仮想通貨コミュニティに直接アピールし、米国を「世界の仮想通貨の首都」にすると約束した。また、こうした政策は政府の政策を利用して需要を高め、個人が保有するビットコインポートフォリオの価値を高める可能性があると警告する声もある。いずれにせよ、新たな準備金と備蓄は、米国の資産と収入を増やすための斬新な方法(米国の政府系ファンドのアイデアなど)を見つけ、AIやその他の政策に影響を与えてきたテクノロジーに精通した顧問の意見に耳を傾けるというトランプ大統領の意図を示している。(アンドリュー・カピストラノ)
パーキンス・クイ法律事務所によるリスクへ対処するための大統領令(3月6日)
この大統領令は、パーキンス・クイ法律事務所が2016年の大統領選挙において虚偽の報告書を作成したことや、人種や性別に基づく差別的な雇用を行っていることを問題視し、同事務所の職員のセキュリティクリアランスを停止し、可能な限り連邦政府と同事務所との契約を解除するよう命じる。しかし、3月12日、連邦地裁判事がこの大統領令の執行を一部差し止める決定を下している。(大統領令はこちら)
南部国境を超えた違法薬物の流入に対処するための関税措置の修正案に関する大統領令(3月6日)
この大統領令は、アメリカの自動車産業への影響を最小限に抑えるため、メキシコからの輸入品に課す関税の調整を指示している。USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の対象品目は関税措置の適用外とされた。メキシコへの関税措置は、3月4日まで一時停止されていたが、同日に発動された。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
北部国境を超えた違法薬物の流入に対処するための関税措置の修正案に関する大統領令(3月6日)
この大統領令は、アメリカの自動車産業への影響を最小限に抑えるため、カナダからの輸入品に課す関税の調整を指示している。USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の対象品目は関税措置の適用外とされた。カナダへの関税措置は3月4日まで一時停止されていたが、同日に発動された。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
ジョセリン・ナンカレーを称える大統領令(3月5日)
この大統領令は、ジョセリン・ナンカレーの死を悼み、「アナワック国立野生生物保護区」を「ジョセリン・ナンカレー国立野生生物保護区」に改名するように命じている。ジョセリン・ナンカレーは、2024年のテキサスにおいて、バイデン前政権下で釈放されたベネズエラの不法移民2名によって殺害された12歳の少女である。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
「トランプ大統領はアメリカを製造業超大国へ改造中」(3月12日)
ホワイトハウスは、政権発足後僅か7週間で、国内外あらゆる分野の企業が米国内の製造拠点・部門への投資を発表し続けているほか、関税は米国内への工場移転を促進していると強調した。日産、ホンダ、アサヒなどの日本企業の名前も例として挙げられている。(詳細はこちら)
「勝利:雇用創出が急増してインフレも低減、国境警備も成果を見せ始める」(3月12日)
ホワイトハウスは、消費者物価指数が過去4年で最低水準になり、予想以上のインフレ緩和が進んでいるとした。またアサヒホールディングスなどを例に挙げ、政権の規制緩和によって米国内への設備投資が促進されているとしている。(詳細はこちら、会見全文はこちら)
連邦民事訴訟規則65(c)の適用を確実にするよう求める覚書(3月11日)
トランプ大統領は、昨今の様々な訴訟が行政プロセスを妨害しているとし、連邦民事訴訟規則65(c)の規定に沿った要請を行うよう、行政機関の全ての長に命じた。この規則65(c)では、裁判所が仮差し止め命令等を発出する際に、差し止めが不当であった場合に生じうる損害を補償するため、裁判所が裁量に基づき、原告側が相当額の担保を提供することを義務付けている。(覚書はこちら)
「ファクトチェック:トランプ大統領は社会保障とメディケアを常に保護していく」(3月11日)
ホワイトハウスは、トランプ政権が社会保障やメディケア、メディケイド自体を削減するわけではないということを強調した。会計検査院のデータを挙げ、イーロン・マスクの主張する「給付金における無駄と不正の排除」を支持している。(詳細はこちら)
「トランプ大統領は50日間で50の勝利を国民に実現」(3月10日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領就任50日間を節目とし、これまでの成果のうち重要なものを50項にまとめて公表した。成果の強調の一方で、あらゆる分野において前政権の成果の撤回や批判を行っている。(詳細はこちら)
大統領専用機内の囲み取材にて(3月9日)
トランプ大統領は、移動中の機内にてメディアの囲み取材を受けた。関税の正当性の強調、中国との今後、イーロン・マスクと閣僚間の緊張の否定、DOGEへの支持、ウクライナ停戦への強い意気込みと停戦交渉への楽観的な見方などを共有した。(詳細はこちら)
2025年 米国人質・不当拘束者の日に関する布告(3月9日)
この布告は2023年に承認された公法に基づき、改めて3月9日を「米国人質・不当拘束者の日」と宣言するもの。またトランプ大統領就任以来、海外で拘束されていたアメリカ人計13人が既に解放され、これからも取り組みを強化していくことを強調している。(布告はこちら)
「トランプ政権下では勝利に飽くことはない」(3月8日)
ホワイトハウスは、トランプ政権第7週における成果を分野問わず羅列し、「過去4年のダメージから回復し、新たな黄金時代に導き続けている」としている。(詳細はこちら)
2025年 全国消費者保護週間に関する布告(3月7日)
この布告は、消費者の権利がアメリカの自由、経済、そして成功の基盤であるとして、消費者教育の促進を呼びかけるとともに、3月2日~8日を「全国消費者保護週間」と定めるもの。(布告はこちら)
2025年 トランプ大統領の施政方針演説(3月6日)
トランプ大統領は3月4日、上下両院に対して施政方針演説を行った。就任からわずか43日間で、過去の政権が任期中に達成した内容を上回る功績を挙げたと強調し、減税の延長やインフレ対策、国境管理の強化、外交政策の見直しなど、今後の政策方針について議会に説明を行った。(演説全文はこちら、関連記事はこちら)
2025年 アイルランド系アメリカ人遺産月間に関する布告(3月6日)
この布告は、アイルランド系アメリカ人がアメリカの歴史において果たしてきた重要な役割を称え、2025年3月を「アイルランド系アメリカ人遺産月間」を宣言するもの。(布告はこちら)
「トランプ大統領は力による平和をリードしている」(3月4日)
トランプ大統領は「力による平和」を掲げ、アメリカの軍事力を強化することで世界の安全を回復させているとし、アメリカ人の人質解放やウクライナでの和平交渉の開始などの成果を強調した。(詳細はこちら)
「トランプ大統領は、街から殺人犯、レイプ犯、麻薬密売人を排除している」(3月4日)
トランプ大統領は、アメリカ史上最大規模の不法移民摘発作戦を開始し、殺人犯やレイプ犯、麻薬密売人などの不法移民を多数取り締まった成果を強調している。(詳細はこちら)
「トランプ大統領は、アメリカの労働者を最優先し、アメリカの製造業を復活させるために取り組んでいる」(3月4日)
トランプ大統領のもとで、アメリカの労働者を守り、産業を強化するために関税引き上げなどの施策が講じられた結果、日産やホンダを含むグローバル企業が生産拠点をアメリカに移転し、約2兆円の新たな投資を引き寄せるなど、その成果が強調されている。(詳細はこちら)
「トランプ大統領は、政府が再び国民のために機能するようにしている」(3月4日)
トランプ大統領は、浪費や不正を排除することで連邦政府の縮小を進める方針を改めて示し、政府効率化省(DOGE)やUSAIDの解体などの成果を強調した。(詳細はこちら)
「トランプ大統領はアメリカのエネルギーを解放している」(3月4日)
パリ協定からの脱退やエネルギー規制の緩和など、トランプ政権がこれまでに講じたエネルギー関連の施策が強調されている。(詳細はこちら)
「トランプ大統領は、バイデン政権による経済ダメージを是正している」(3月4日)
バイデン前政権の施策を是正することを目的とした、エネルギー価格の引き下げや規制緩和による国民の生活費抑制といったトランプ政権の成果が強調されている。(詳細はこちら)
「トランプ大統領は政府の常識を取り戻している」(3月4日)
政府は国民のために機能すべきだという方針のもとでトランプ大統領がこれまで進めている、DEI(多様性・公平性・包摂性)廃止やCOVID-19ワクチン義務化の廃止といった施策の成果が説明されている。(詳細はこちら)
「トランプ大統領は我が国の安全を確保している」(3月4日)
バイデン前政権の移民政策への批判とともに、トランプ大統領が新たな法律を制定することなく、不法移民や麻薬密輸の取り締まりにおいて大きな成果を上げたことが強調されている。(詳細はこちら)