トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.20(2025年6月4日-6月10日)

トランプ政権トラッカーの一覧(2025年1月20日~)
・【一覧】トランプ政権トラッカー(大統領令・布告・覚書・発表)
大統領令一覧
超音速飛行分野で世界をリードするための大統領令(6月6日)
この大統領令は、50年以上にわたり過度な規制が民間の超音速飛行の実現を妨げてきた現状を踏まえ、超音速飛行に関する規制の見直しと緩和、関連技術の研究開発の推進、そして国際的な規制との整合性の確保を関係省庁に指示することで、超音速飛行の実現を目指している。(布告はこちら、ファクトシートはこちら)
アメリカの航空主権を回復する大統領令(6月6日)
この大統領令は、無人航空機システム(UAS、いわゆるドローン)による脅威の高まりを受け、米国の領空の安全確保と管理強化を図るものである。具体的には、ドローン脅威への対策を担うタスクフォースの設置、ドローン飛行に関する規則の整備、違法運用に対する法執行と刑事罰強化の検討、ドローンの探知・追跡体制の整備、重要施設の保護強化、さらに対ドローン能力の向上などを関係省庁に命じている。(布告はこちら、ファクトシートはこちら)
アメリカのドローン覇権を解き放つ大統領令(6月6日)
この大統領令は、無人航空機システム(UAS、いわゆるドローン)分野における米国のリーダーシップ強化を目的とし、商業用ドローンの運用拡大、国家航空システムへの統合促進、電動垂直離着陸機(eVTOL)のパイロットプログラム創設、ドローン産業の国内基盤の強化、米国製ドローンの輸出促進、軍用ドローンの導入加速などを関係省庁に命じている。(布告はこちら、ファクトシートはこちら)
■解説付き■ 国家のサイバーセキュリティ強化のための取り組み継続と大統領令13694および14144の改正に関する大統領令(6月6日)
本大統領令は、バイデン政権下の大統領令14144およびオバマ政権下の大統領令13694を修正するものであり、安全なソフトウェア開発、連邦ネットワークの可視化強化、悪質なサイバー活動への対抗といった前政権の戦略目標の多くを継承しつつ、一部の厳格な要件の緩和やAIの活用促進など、時代の変化に対応した修正が加えられている。(布告はこちら、ファクトシートはこちら)
解説
本大統領令は、バイデン政権時のサイバーセキュリティ政策に対して、いくつかの重要な変更を加えている。例えば、ソフトウェアサプライチェーン対策として、ソフトウェア開発企業が政府へ納入する際に求められたNIST(米国立標準技術研究所)ガイドラインへの準拠証明を不要としたほか、重大なサイバー攻撃に関与した人物への制裁対象を「すべての人」から「すべての外国人」に限定した。さらに、AIを活用したサイバーセキュリティの取り組みも「脆弱性の特定と管理」に絞るなど、全体として政府による規制や関与の範囲を限定するものとなっている。また、5月に公表されたFY2026の米連邦政府予算要求では、同国のサイバーセキュリティ対策の中核を担うCISA(サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁)の予算が前年度比で約17%、職員数が約30%削減される案が示されている。今回の大統領令においても、中国をはじめとする外国からのサイバー脅威の深刻さの認識は引き続き明示されているものの、実態としての米国政府のサイバー対策規模が縮小する可能性があり、その中長期的な影響が懸念される。加えて、CISAは、日本の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)や警察庁等と合同で注意喚起を発するなど、国際協力でも中核的な役割を担ってきただけに、CISAが活動範囲を縮小する場合、多国間の連携体制や共同対応にも影響を及ぼすおそれがある。(梅田耕太)
布告・覚書・公式発表一覧
米国の雇用を創出する中小企業、One Big Beautiful Billを支持(6月10日)
ホワイトハウスは、中小企業が税金に対して懸念を持っている中、保守・企業系ロビー団体の行った世論調査を例に「中小企業によるOne Big Beautiful Billへの圧倒的な支持」があるとして強調した。また法案を支持するメディア等の記事を引用し、税控除や法人税減税等を中小企業にもたらされるメリットとして示した。(布告はこちら)
「トランプ口座が、アメリカの子どもたちの世代に繁栄の道を切り開く」(6月9日)
トランプ大統領は、ビジネスリーダーや議員とともに、新生児向けの非課税投資口座「トランプ・アカウント」の創設を発表した。これはOne Big Beautiful Billに基づく取り組みの一つで全てのアメリカ国籍の新生児に対し、税制優遇付きの投資口座を開設し、政府が最初に1,000ドルを拠出する。口座は保護者の管理下に置かれ、年5,000ドルまで追加で民間から拠出可能であり、株価指数に連動した運用が行われる。(詳細はこちら)
テキサス州ラレド近郊における商用高架貨物輸送路の建設等を認可する大統領許可(6月9日)
アメリカ・メキシコ国境における商用貨物輸送の効率化と環境負荷の軽減を目的として、テキサス州ラレド付近の国境地帯において、Green Corridors, LLC による高架型貨物専用輸送路の建設・維持・運営を認める大統領許可を発行したものである。本計画では、混雑の緩和や排出量の削減を図るとともに、24時間稼働可能なシャトル型輸送システムを導入することとしている。建設着手の期限は発行日から5年以内とされ、関係当局による許認可や環境審査などが条件として課されている。(詳細はこちら)
「トランプ大統領は、民主党が動かない中でも行動を起こしている」(6月9日)
トランプ政権による不法移民の強制送還に対し、ロサンゼルスで急進左派が抗議活動を行っていることについて、ホワイトハウスは、民主党のニューサム知事やバス市長が行動を起こさない中、トランプ大統領が治安維持に乗り出していることを称賛し、彼らもその対応に感謝すべきであるとしている。また、最近ロサンゼルスで逮捕された犯罪歴のある不法移民についても具体的に紹介している。(詳細はこちら)
ロサンゼルスへの州兵動員:国土安全保障省の機能を保護するための安全保障措置に関する覚書(6月7日)
この覚書は、最近、移民税関捜査局( ICE)などによる連邦法の執行に対して相次ぐ暴力的な抗議活動や脅威を受け、連邦機関や職員、連邦財産を保護するために、州兵を召集する方針を示したものである。召集される州兵は少なくとも2,000人、任務期間は60日間または国防長官の裁量で定められる。(詳細はこちら)
カリフォルニアのデモに関する声明(6月7日)
ホワイトハウスは、ロサンゼルスで強制送還業務を行っていた移民税関捜査局(ICE)の捜査員や連邦法執行官が暴徒に襲撃されたにもかからず、カリフォルニア州の民主党指導者が市民保護の責任を放棄したと非難した。その上で、トランプ大統領が、2000人の州兵を動員する覚書に署名したと発表し、法執行に従事する者への暴力行為は決して容認しない姿勢を強調した。(詳細はこちら)
「One Big Beautiful Bill は財政の軌道を修正する」(6月7日)
ホワイトハウスは、行政管理予算局がホワイトハウス広報部長宛てに送ったメモを公開し、One Big Beautiful Bill (OBBB)が米国の財政に与える影響を紹介した。このメモでは、OBBBが1.7兆ドルという史上最大規模の財政削減を実現すると紹介している。(詳細はこちら)
メディケイドにおける無駄・不正・濫用を撲滅する覚書(6月6日)
低所得者向け公的医療保険であるメディケイドについては、従来、高齢者向け医療保険であるメディケアと同水準の支払い額が上限とされてきた。
本覚書では、バイデン前政権下の制度運用により、一部の州が制度の抜け穴を利用して州の負担を回避し、その結果としてメディケイドに対する連邦予算の支出が急増している状況が指摘されている。トランプ政権はこれを無駄・詐欺・濫用とみなし、関係省庁に対して対策を講じるよう命じている。(詳細はこちら)
2025年 全米海洋月間に関する布告(6月6日)
この布告は、トランプ大統領が就任以降に実施してきたアメリカ湾への改名や海洋資源の開発促進などの施策を紹介しつつ、米国にとって海洋が果たす重要な役割を改めて強調し、2025年6月を全米海洋月間と定めている。(詳細はこちら)
2025年 Dデイ81周年に寄せる大統領メッセージ(6月6日)
ホワイトハウスは、第二次世界大戦の流れを変えた重要な戦いである「ノルマンディー上陸作戦」(1944年6月6日)から81周年を迎えるにあたり、当時の兵士たちの勇気と犠牲に敬意を表し、その遺志と自由を守り続ける決意を改めて示した。(詳細はこちら)
環境諮問委員会主導の許認可イノベーションセンター、国家環境政策法に基づく審査を効率化するツール「CE Explorer」を発表(6月5日)
ホワイトハウスは、4/15の覚書で発足した許認可イノベーションセンターがツール「CE Explorer」を開発したことを発表した。米国では国家環境政策法(NEPA)に基づいて環境アセスメントが行われるが、その際一般に重大な影響がないような一定項目については初めから審査対象より除外される。このツールは、そのような除外項目についてシームレスな閲覧・検索が可能なデジタル・データベースであり、許認可の効率化を図るほか、連邦政府諸機関間の連携を促進してさらなる除外項目の導入を支援するものである。(詳細はこちら、CE Explorerについてはこちら)
ハーバード大学におけるリスクへの対処により、国家安全保障を強化する布告(6月5日)
この布告は、ハーバード大学が留学生管理の不備および敵対的な外国政府との関係を有し、国家安全保障上の脅威となっていると認定した上で、同大学への留学生の流入を大幅に制限するものである。本布告より6ヶ月間(延長の可能性あり)、ハーバード大学への入学や研究・教育活動を目的とした外国人の入国が停止・制限される。また、既に米国に滞在する同大学在籍のF・M・J各種ビザ保持者についても、ビザ取り消しの検討が命じられている。「米国の国益にかなう」と判断される場合には例外措置が認められる。(布告はこちら、ファクトシートについてはこちら)
特定の大統領令について、検証を求める覚書(6月4日)
この覚書は、バイデン前大統領の就任期間後半において同氏の認知能力低下が顕著であったとして、当時の政策決定過程の調査を司法長官及び大統領顧問へ指示するもの。当時の側近による同氏の認知能力低下の隠蔽疑惑に加え、大統領令発令などの権限行使を代理で行っていたという疑惑を例示し、検証を求めている。(布告はこちら、ファクトシートについてはこちら)
外国のテロリストや安全保障・公共の安全上の脅威から米国を守るため、特定の外国人の入国を制限する布告(6月4日)
この布告は、米国に入国する外国人に対し、身元確認・情報共有体制が不十分であることなどを理由として、特定国からの入国を全面的または部分的に制限するもの。具体的には、アフガニスタン、ミャンマー、チャド、コンゴ共和国、赤道ギニア、エリトリア、ハイチ、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンの12か国には全面的な制限を、ブルンジ、キューバ、ラオス、シエラレオネ、トーゴ、トルクメニスタン、ベネズエラの7カ国については部分的な制限を適用する。ただし、永住者や特定のビザ保持者等については例外が認められる場合もある。(布告はこちら、ファクトシートについてはこちら)
オンライン上の児童保護への取り組みを力説する、メラニア・トランプ大統領夫人による連邦取引委員会への書簡(6月4日)
連邦取引委員会主催のオンライン上の児童保護に関するワークショップに際して、メラニア・トランプ大統領夫人が送付した書簡がホワイトハウスのウェブサイトで公開された。同夫人は児童のオンライン上での安全確保を含む「BE BEST」イニシアティブの継続的な推進を強調し、保護者や民間企業との協力の重要性に言及した。(布告はこちら)
ミッドウェー海戦83周年に向けた大統領メッセージ(6月4日)
ホワイトハウスは、太平洋戦争の転換点であったミッドウェー海戦から83周年を記念し、アメリカの精神や戦没者・軍人たちに敬意を表する大統領メッセージを公開した。また、現在における日米の強固なパートナーシップとインド太平洋地域の平和への貢献を強調し、中国や北朝鮮からの脅威を前にして、自由と安全保障の維持に取り組む姿勢を示した。(布告はこちら)