トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.21(2025年6月12日-6月17日)

大統領令一覧
米国・英国経済繁栄協定の一般原則の履行に関する大統領令(6月16日)
この大統領令は2025年5月8日に発表された米国・英国経済繁栄協定の一般原則について、その履行を具体的に指示するもの。自動車および自動車部品に関しては、当初の方針通り、2025年3月26日の布告に基づき本来25%の関税が課されるところ、年間10万台を上限に、関税2.5%と最恵国税率2.5%を合わせた10%の関税が適用される(クオータ超過分は従来の25%関税を適用)。航空宇宙製品に関しては、2025年4月2日の大統領令14257をはじめとする既存の関税措置を撤廃する。アルミニウムおよび鉄鋼製品についても、適切な時期に、英国製品に関する関税割当制度を導入する方針が示された。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
日本製鉄によるUSスチール買収提案に関する大統領令(6月13日)
この大統領令は、日本製鉄によるUSスチールの買収計画をめぐり、2025年1月3日にバイデン大統領が発出した買収禁止命令の一部を修正し、米政府と日本製鉄、USスチールが国家安全保障協定(NSA)を締結し、遵守することを条件に買収を承認するものである。協定が遵守されない場合には、対米外国投資委員会(CFIUS)が必要な監視・強制措置を講じる権限を有する。この買収計画をめぐっては、2025年4月7日にトランプ大統領が覚書を通じて再審査を指示しており、これを受けてCFIUSが審査を実施し、5月21日にその審査結果をトランプ大統領に報告していた経緯がある。(大統領令はこちら)
常識的な野火予防・対応を推進する大統領令(6月12日)
この大統領令は、野火や山火事の予防及び発生時対応について、制度や技術などあらゆる面で改革を進めるもの。具体的には、内務長官と農務長官に対し総合的な対応指針の作成を命じるほか、連邦・州・地方の連携強化、規制改革、さらにAI・衛星など革新的手法の導入や専用航空機の確保といった技術面の対応も進める。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら、専用航空機の確保に向けた法案成立の通知はこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
バンカーヒルの戦い250周年記念に関する布告(6月17日)
この布告は、アメリカ独立戦争初期の1775年6月17日に発生した「バンカーヒルの戦い」から250周年を迎えるにあたり、当時、劣勢にもかかわらず自由のために立ち上がった愛国者たちの勇気と犠牲を称えるとともに、その精神が今日のアメリカにも受け継がれていることを強調し、2025年6月17日を「バンカーヒルの戦い250周年記念日」と宣言するもの。(布告はこちら)
「トランプ大統領は、イランは核兵器を保有してはならないと常に明確に示している」(6月17日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領がイランの核保有に反対する立場を一貫して維持していることを強調し、大統領就任前からの同氏の発言を列挙して示した。(詳細はこちら)
「トランプ大統領、陸軍創設250周年を記念し、象徴的な記念パレードを開催」(6月15日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領、大統領夫人、政権関係者や軍指導者らが首都ワシントンに集まり、米陸軍の250周年を祝う盛大なパレードを開催したことを、パレードの写真とともに報告した。パレードの中で、トランプ大統領は米兵がいかなる任務や危険にも立ち向かうと述べた。(詳細はこちら)
2025年 父の日に関する布告(6月13日)
この布告は、米国における父親たちの役割の重要性と影響力を称え、2025年6月15日を「父の日」と定めるとともに、当日は連邦政府の建物に星条旗を掲げるよう呼びかけている。(詳細はこちら)
2025年 星条旗制定記念日および国旗週間に関する布告(6月13日)
この布告は、1777年6月14日に第二次大陸会議で星条旗が米国の正式な国旗として採択されて以来、約250年間にわたり米国の象徴として掲げられてきた国旗の意義を強調した上で、2025年6月14日を「星条旗制定記念日」、6月8日から始まる週を「国旗週間」と宣言している。また連邦政府機関および国民に対し、期間中は国旗を掲げるよう呼びかけている。(詳細はこちら)
テキサス州ラレド市によるラレド・コロンビア・ソリダリティ国際橋陸上国境検問所の車両用通過地点の拡張・維持・運用を認可する大統領許可(6月13日)
この大統領許可は、テキサス州ラレド市に対し、ラレド・コロンビア・ソリダリティ国際橋陸上国境検問所において、既存橋に並行する4車線の車両用橋2本の新設・拡張・維持・運営を認可するもの。これにより国境貿易増加や交通渋滞緩和、地域経済の活性化が期待される。(詳細はこちら)
アメリカ陸軍創設250周年記念に関する布告(6月13日)
この布告は、独立戦争中の陸軍の活躍を称えるとともに、軍の強さを維持するため、トランプ大統領が軍からのDEI(多様性・公平性・包摂性)の排除、トランスジェンダー基準の見直し、ワクチン接種拒否で除隊された兵士の全面的な復職などを進めたことに言及し、2025年6月14日を陸軍創設250周年記念日とすることを宣言した。(詳細はこちら)
2025年 全米メンズヘルス週間に寄せる大統領メッセージ(6月13日)
ホワイトハウスは、米国男性が健康や福祉面で軽視され、女性より平均寿命が短く、自殺や薬物の過剰摂取も多いという現状を踏まえ、医薬品価格の引き下げや医療へのアクセス改善を通じて男性の健康を守る決意を表明している。(詳細はこちら)
イスラエルによるイラン攻撃に関する、マルコ・ルビオ国務長官の声明(6月12日)
ルビオ国務長官は、イスラエルがイランの核関連施設等を攻撃したことについて、事前に通知は受けていたが米国は関与していないと発表した。また、トランプ政権の優先事項は、中東地域に展開する米軍の保護であること、地域内のパートナー国の緊密な連絡があることを強調した上で、イランが米国を標的とならないよう牽制した。(詳細はこちら)
カリフォルニア州の政策目標を阻止する措置についての大統領声明(6月12日)
トランプ大統領は、カリフォルニア州がEV等の義務化や燃費規制、排ガス規制などの政策目標を全米レベルにまで広げる意志があるとして、これを米国の連邦制における基本原則に反した動きと捉え、これを阻むための議会決議案(H.J. Res. 87, 88, 89)に署名したことを公表した。(詳細はこちら、関連法案成立の通知はこちら)
コロンビア川流域での電力供給のため、過激な環境優先主義を阻止する覚書(6月5日)
この覚書は、バイデン政権時にコロンビア川の魚類保護のため発出された覚書とその関連施策を撤回するものである。魚類保護のために複数のダムが撤去されることで、3,000MW以上の水力発電容量が失われるほか、水上航路の喪失や供給水量の減少による農業への打撃等の懸念を理由とした。(覚書はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
「報告書:One Big Beautiful Billの可決に失敗すれば、110万以上の雇用が失われる」(6月12日)
ホワイトハウスは全米製造業協会(NAM)の報告書を引用し、One Big Beautiful Billが否決された場合に生じ得る莫大な雇用喪失を訴えた。また、法案に盛り込まれた税率引き下げと控除が中小企業や家族経営のビジネスの負担を特に緩和するものであるとして、法案が可決されなければ負の影響をもたらすと警告した。(詳細はこちら)
マイクロン・テクノロジー、半導体への大規模投資と米国内生産を発表(6月12日)
ホワイトハウスは、アイダホ州に本社を置くマイクロン・テクノロジー社が、半導体関連施設の整備や先端技術の国内導入に向けて2,000億ドル規模の投資を行うことを発表した。またトランプ政権発足後、半導体を中心に技術開発や生産に関する投資が総額数兆ドル規模で確保されていることが強調された。(詳細はこちら)