トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.27(2025年7月30日-8月5日)

大統領令一覧
2028年夏季オリンピックに関するホワイトハウス・タスクフォースを設立する大統領令(8月5日)
この大統領令は、2028年にロサンゼルスで開催される夏期オリンピックに向け、トランプ大統領を議長、ヴァンス副大統領を副議長とするホワイトハウス・タスクフォースを設立するもの。各省長官・各補佐官はオリンピックに向けた各省の活動計画を報告し、タスクフォース全体として関連法制・セキュリティ・輸送・出入国の調整や州・地方自治体との協力、大会参加者に対するビザ・資格認定の効率化などを推進する。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
相互関税のさらなる改定に関する大統領令(7月31日)
この大統領令は、4月2日の大統領令で相互関税を発表して以降の各国の姿勢や交渉動向を反映し、各国ごとの個別関税率を改定するものである。8月7日以降の各国の個別関税は付属書の表に従って課せられ、日本の場合は合意に基づく15%となっている(表に記載のない国については、10%の関税率)。また関税の迂回についてはこれを継続的に監視し、判明時には罰則を科す規定も定められている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
北部国境を越える違法薬物の流入に対処するための関税措置を修正する大統領令(7月31日)
この大統領令は、カナダが違法薬物の米国への流入抑制に十分な協力を行わず、さらに米国の措置に対し報復措置を講じたことを受け、対カナダ関税を25%から35%に引き上げることを命じたものである。新たな関税率は8月1日より発動されるが、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の対象品目については引き続き本関税措置の適用外とされている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
「スポーツ・フィットネス・栄養に関する大統領諮問委員会」を再活性化し、大統領体力テストを復活させる大統領令(7月31日)
この大統領令は、「スポーツ・フィットネス・栄養に関する大統領諮問委員会」の再活性化や、「大統領体力テスト」の復活を通じ、若者を中心とする国民のスポーツ・フィットネス政策を推進するもの。同委員会には、学校における体育プログラムの開発支援と評価の整備、全国規模でのスポーツの機会拡大やフィットネス目標の設定、さらに健康問題を安全保障上の課題と捉えた戦略立案などが求められている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
「De Minimis」免税措置を全ての国に対して停止する大統領令(7月30日)
この大統領令は、中国等に対して関税回避を防ぐために執られていた「De Minimis」免税の停止措置を継続しつつ、さらに措置の適用を全ての国へ拡大するものである。2025年8月29日以降、米国へ送られる少額貨物のうち、国際郵便ネットワーク外で送付されるものに対しては全ての関税がかけられる。国際郵便ネットワーク内で送られるものに対しては、発送国に適用される関税率に応じた従価関税または発送国の関税率区分に応じた特定関税(80-200ドル)がかけられる。(大統領令はこちら)
ブラジル政府による米国への脅威に対処する大統領令(7月30日)
この大統領令は、ブラジル政府による言論の自由や人権の侵害、米国経済への不当な干渉を、米国に対する重大な脅威と認定し、国家非常事態を宣言したもの。2025年8月6日から、ブラジル産の特定製品に対し追加で40%の従価関税を課し、既存の関税と合わせて最大50%とする措置を発動する。なお、今後のブラジル政府による対応姿勢に応じ、措置が改められる余地が残されている。また、特定の金属、民間航空機、エネルギー資源、肥料など一部品目は適用除外とし、その詳細は付属書に規定されている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
トランプ大統領、カロル・ナブロツキ次期ポーランド大統領の就任式へ大統領代表団を派遣することを発表(8月5日)
トランプ大統領は、8月6日にワルシャワで行われるカロル・ナブロツキ次期ポーランド大統領の就任式へ、大統領代表団を派遣することを発表した。代表団はケリー・ロフラー中小企業庁長官が率いる。(詳細はこちら)
APECデジタル・AI担当大臣会合における、クラツィオス科学技術政策局長の発言(8月5日)
ホワイトハウスは、8月5日に仁川で開催されたAPECデジタル・AI担当大臣会合におけるマイケル・クラツィオス科学技術政策局長の発言全文を公開した。発言では、来るAI競争がもたらす変化に適応することの重要性に触れ、米国としてはAIアクションプランに沿って規制緩和とイノベーション促進に取り組む姿勢を示した。特にその中で、米国が先進的なAIをフルスタックで輸出することを強調し、米国のAI基盤を通じたアジア太平洋地域の協調と相互繁栄を各国に呼び掛けた。(詳細はこちら)
全米射撃スポーツ月間に寄せる大統領メッセージ(8月4日)
ホワイトハウスは、全米射撃スポーツ月間を迎えるにあたり、射撃や狩猟などの伝統的なスポーツ文化を称え、その継承に努める姿勢を示した。また、憲法で保障された武器所有の権利は、政府ではなく神から授けられたものだという理念を再確認し、トランプ政権としてこの権利を侵害しないことを改めて強調している。(詳細はこちら)
米沿岸警備隊 創設235周年に寄せる大統領メッセージ(8月4日)
ホワイトハウスは、沿岸警備隊が235年間にわたって米国の水域を守り、国家の安全を担ってきた功績を称えるとともに、One Big Beautiful Billで定められた「Force Design 2028」という予算計画を通じて沿岸警備隊を支援し、今後もその能力強化に注力する姿勢を改めて表明した。(詳細はこちら)
ガダルカナルの戦い83周年に寄せる大統領メッセージ(8月2日)
ホワイトハウスは、1942年8月7日から約6ヶ月にわたって続いた「ガダルカナルの戦い」から83周年を迎えるにあたり、米軍の勇気と犠牲を称えるとともに、「力による平和」を軸とした外交方針を改めて表明した。(詳細はこちら)
「米労働統計局(BLS)には長年にわたる不正確さと無能の歴史がある」(8月1日)
ホワイトハウスは、米労働統計局(BLS)が同日に発表した雇用統計で2025年5月・6月分を合わせて25.8万人分下方修正したことを受け、エリカ・マクエンタファー局長(バイデン前政権が任命)を「過度に楽観的な統計を繰り返し発表してきた」として強く批判する声明を公表した。同声明では、マクエンタファー氏の在任中、重要な統計データの漏洩により、BLSの信頼性が大きく損ねられたとも非難している。(詳細はこちら)
「『前例なし』:不法越境件数がさらに減少し、過去最低を更新」(8月1日)
ホワイトハウスは、2025年7月の南部国境における不法越境者が過去最低の4,598人となり、一日平均ではわずか148人にとどまったと発表した。これは、6月の記録的低基準からさらに24%の減少となり、ホワイトハウスはトランプ政権が公約通りに行動している証だと強調している。(詳細はこちら)
ファクトシート:トランプ大統領、米国民に処方薬を最適価格で届けるための措置を公表(7月31日)
ホワイトハウスは、製薬業界が米国政府の補助を受けているにも関わらず海外市場へのアクセスを優先し米国民へ還元していないとして、トランプ大統領が主要製薬会社に対し是正措置を執るよう強く求める書簡を送ったことを公表した。具体的には、米国における処方薬の価格が他先進国での最低販売価格を超えないようにすることを求めるほか、米国内薬価の引き下げを条件とした場合に限り、海外での薬価引き上げを認め、その増収分を米国患者に還元する施策についても政府として支援する方針を示した。(ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
ホワイトハウス、新たな主宴会場の建設開始を公表(7月31日)
ホワイトハウスは、大規模な来賓を迎えるための十分なスペースが現状不足していることから、新たな主宴会場(Ballroom)を建設することを発表した。現在のイースト・ウイングの場所に2025年9月に着工予定であり、建設費用はトランプ大統領をはじめとする有志による寄付で賄われる。(詳細はこちら)
米国初の代議制立法議会開催406周年に寄せる大統領メッセージ(7月30日)
トランプ大統領は、1619年にヴァージニア植民地で入植者による初の議会が開催されてから、2025年で406周年を迎えることを記念するメッセージを公表した。自由や独立といった理念に基づく統治こそがアメリカの精神を体現していると述べ、国民の一体性の重要性を強調した。(詳細はこちら)
下院提出法案1815「VA Home Loan Program Reform Act」が成立(7月30日)
下院提出法案1815「VA Home Loan Program Reform Act」が大統領の署名によって、連邦法として成立した。これは退役軍人省(VA)が管轄する住宅ローンについて、債務不履行等のケースが生じた際のローン差し押さえ回避などのため、特定の措置を講じることを認めるものである。(詳細はこちら)
米国への銅輸入を調整する布告(7月30日)
この布告は、2025年2月25日の大統領令に基づく商務長官の調査勧告を受け、銅輸入依存が米国の安全保障上重大な脅威をもたらしていると認定し、米国産業基盤の維持・強化のための是正措置を講じるものである。具体的には、8月1日より銅の半製品及び派生製品に対し、銅含有部分に対し追加で50%の関税をかける。なお、銅の原料やスクラップ、自動車関税の対象製品については適用除外とした。さらに、米国内で生産される銅原料や高品質スクラップの一定比率を国内市場に供給する義務付けの導入も示唆されている。(布告はこちら、ファクトシートはこちら)
ファクトシート:デジタル資産市場に関する大統領作業部会、デジタル金融技術分野における米国の主導力強化に向けた提言を発表(7月30日)
ホワイトハウスは、1/23の大統領令で設置された「デジタル資産市場に関する大統領作業部会」が政策ロードマップを公開したことを発表した。主な提言としては、デジタル資産市場の監督やDeFiテクノロジーの採用といった市場構造の形成に加え、デジタル資産の活用に向けた銀行規制改革、ドル覇権強化のためのGENIUS法の迅速な執行、マネーロンダリング対策、デジタル資産課税の公平性担保などを挙げている。(ファクトシートはこちら)
「トランプ大統領の政策で予想を上回る経済成長」(7月30日)
ホワイトハウスは、専門家らの予測に反して米国経済が成長していると主張し、パウエルFRB議長に対する利下げ要求を改めて露わにした。経済成長の根拠として、GDPの前期比3.0%成長、消費者支出の伸び、民間部門の投資増、工業生産の増加などを挙げている。(詳細はこちら、関連記事はこちら)