トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.25(2025年7月9日-7月23日)

大統領令一覧
フルスタックの米国製AI技術の輸出を促進するための大統領令(7月23日)
この大統領令は、フルスタックの米国製技術パッケージが世界中で採用されるよう促進することで、長期的な技術的優位性を確立するものである。今後90日以内に商務長官、国務長官、科学技術政策局(OSTP)局長は、協議の上で「米国製AI輸出プログラム」を立ち上げ、産業界からの提案を募集・選定する。さらに、国務長官を議長とする経済外交アクショングループ(EDAG)に対しては、AI輸出のための連邦政府による融資・保証・技術支援の実施が求められるほか、統一的な連邦政府戦略の策定・実行、多国間イニシアティブや国別パートナーシップへの参加調整、米国製AIシステムの展開に資するイノベーション促進的な規制・データ・インフラ環境の整備におけるパートナー諸国への支援などが命じられている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
データセンター・インフラに対する連邦レベルの許認可の加速を命じる大統領令(7月23日)
この大統領令は、許認可規制の緩和や財政支援により、AIデータセンターや関連の電力インフラを迅速かつ効率的に構築するよう目指すものである。具体的には、バイデン政権時の大統領令を撤回することでデータセンター開発に対するDEIや環境要件を撤廃する。また、データセンター建設などの「適格プロジェクト」(商務長官決定に基づき、出資者が5億ドル以上の支出を行うもの)に対する財政支援イニシアティブが立ち上げられるほか、環境審査や許認可の迅速化・特別対応、さらに連邦政府所有の土地における建設許可などを進める。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
連邦政府において「Woke」なAIを阻止するための大統領令(7月23日)
この大統領令は、「多様性、公平性、包摂性」(DEI)が差別や偏見を含むとする認識の下、大規模言語モデル(LLM)及びその開発者に対し党派性やイデオロギー性の排除を求めるものである。具体的には、原則として「真実の追求」(歴史的正確性、科学的探究、客観性の優先)と「イデオロギー的中立性」(DEI等に有利になるような回答の操作をしない)が確保されたLLMのみを連邦政府機関で調達する方針を示し、行政管理予算局(OMB)長官らに対し、調達のためのガイダンス発行を指示した。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
除外職に「スケジュールG」を創設する大統領令(7月17日)
この大統領令は、競争を経ないで採用が行われる「除外職」に、政策立案・政策提言の側面を持つ非キャリア職である「スケジュールG」を創設するものである。この職種で採用された職員は、大統領の離任とともに離職することが想定され、大統領の政策実現に貢献することが求められる。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
ファクトシート:トランプ大統領、空前の日米戦略貿易・投資協定を確保(7月23日)
ホワイトハウスは、日米間の関税交渉が合意に至ったことを発表した。まず、日本による対米投資として、液化天然ガス(LNG)や半導体、重要鉱物、医薬品、造船といった米国の中核産業を対象に、総額5,500億ドルの投資が行われる見通しが示された。また、日本市場へのアクセス拡大策としては、米国産米の輸入量を即時に75%拡大することに加え、アラスカ産LNGの引取契約に向けた協議の継続、米国製民間航空機および防衛装備品の調達、さらには長年の規制が撤廃されることで米国製自動車の本格的な市場参入が可能となることが明らかにされた。一方で、日本から米国への輸出品に対しては、当初25%が課される可能性があった関税率が、15%に設定される(引き下げられる)方針が示された。(詳細はこちら)
「One Big Beautiful Billの発効により、中小企業のセンチメントは急上昇中」(7月23日)
ホワイトハウスは、米メディアCNBCが実施した調査を引用し、中小企業の間で経済動向に対する前向きな見方が広がっているとの認識を示した。また政治的立場を問わず、政権への感情改善がみられるとし、One Big Beautiful Billの成果として強調した。(詳細はこちら)
■解説付き■ ホワイトハウス、アメリカのAI行動計画を公表(7月23日)
ホワイトハウスは、1月23日の大統領令に基づき策定された、「AI行動計画」を正式に公開した。同行動計画は、同盟・友好国に対する「米国製AIの輸出」、許認可の迅速化や人材の確保を通じたデータセンター整備の促進、開発や導入を妨げる過度な連邦規制の削減、政府調達における客観的でイデオロギー偏見がない大規模言語モデルへの限定の4点を軸として掲げている。また、合わせて米国のAI政策に関する専用サイトai.govも開設されている。(詳細はこちら)
解説
7月23日、ホワイトハウスはAI行動計画(AI Action Plan)を公表した。本計画は、今年1月23日にAI関連規制の緩和を指示した大統領令(14179)に基づいて策定されたものである。本計画では、米国がAIイノベーションを巡るグローバルな「競争」の渦中にあるとの認識の下で、AIイノベーションの推進、関連インフラの整備促進、米国製AIシステムの国際輸出拡大、中国の影響力に対する対抗措置などが記載されている。AIイノベーションの促進やデータセンターなどのインフラ整備、AIリスクへの対応といった要素は、バイデン政権時代からの継続性があると見なすこともできる。一方で、AI基盤モデルにおけるイデオロギー的バイアス排除の要請、また国際的なAIガバナンスの取り組みに対して、「規制過剰」や「中国の影響」を理由に消極的な姿勢を示すなど、政策転換を示唆する要素も含まれている。つまり、トランプ政権は、バイデン時代に埋め込まれたリベラルな価値を排除し、AIガバナンスに関する国際協調に対して距離を置く姿勢を見せていると言える。今後、日本やEUなど同盟国・同志国が、米国の新たなAI政策との調整をどのように進めていくのかが注目される。(梅田耕太)
米国-インドネシアの相互貿易協定のための枠組みに関する共同声明(7月22日)
ホワイトハウスは、米国-インドネシア間の相互貿易協定に関する交渉枠組みについて、両国間で合意したことを公表した。具体的な枠組みの条件として、インドネシア側は米国産品に対する関税障壁の99%を廃する一方、米国側はインドネシアに対する「相互関税」を19%に引き下げる(米国で非生産の物品についてはさらなる引き下げも可能)ほか、また、自動車、農産物、デジタルサービスなど幅広い分野でインドネシア市場の非関税障壁や課題への包括的対応が盛り込まれている。また両国間では今後、航空機や穀物、エネルギー関連の大規模な商業取引が成立する見通しであることも明かされた。(合意についてはこちら、ファクトシートはこちら、関連記事はこちら)
「トランプ政権下で、アメリカの鉄鋼業界は躍進中」(7月22日)
ホワイトハウスは、米大手鉄鋼メーカー各社の出荷量・収益改善などを取り上げ、バイデン政権期からの劇的な業界回復をトランプ政権の成果として強調した。USスチールについては、大統領が保有する「ゴールデンシェア」制度で雇用と国内産業の維持を狙い、労働者・産業双方に利益がもたらされると訴えた。(詳細はこちら)
グアム解放81周年に寄せる大統領メッセージ(7月21日)
ホワイトハウスは、日本軍の支配下にあったグアムを3週間の激戦の末に奪還し、太平洋戦争終結への重要な転機となった戦いから81周年を迎えるにあたり、グアムの自由のために戦った英雄たちの勇気と犠牲に敬意を表するとともに、「力による平和」という大統領の外交方針を改めて示した。(詳細はこちら)
宇宙探査の日に寄せる大統領メッセージ(7月20日)
ホワイトハウスは、1969年7月20日にアポロ11号が人類初の月面着陸を成功させたことを振り返った上で、今後さらに宇宙探査を加速させるために、One Big Beautiful Billの成立により、有人宇宙探査への投資を確保し、世界の航空宇宙企業と連携して技術開発を進めていることを紹介した。(詳細はこちら)
「トランプ大統領、就任から半年を迎え、歴史的な成果を強調」(7月20日)
トランプ大統領は、自らの就任から半年における主要な成果として、「One Big Beautiful Bill」成立による米国史上最大の減税、インフレ対策、不法移民対策、複数の停戦合意の仲介などを挙げ、近代アメリカ史上最も成功した最初の6ヶ月だったと強調した。(詳細はこちら、関連記事はこちら)
GENIUS法成立(7月18日)
ホワイトハウスは2025年7月18日、大統領が「Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act(通称GENIUS法)」に署名し、決済用ステーブルコインの規制枠組みを定める法律が成立したと発表した。この法案の成立により、消費者保護の強化、ドルの基軸通貨としての地位の維持、違法行為への対処の義務化、そして米国のデジタル資産分野におけるリーダーシップの確立が期待されている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
米国の滅菌医療機器に関する安全保障促進のため、特定の固定発生源に対し規制緩和を行う布告(7月17日)
この布告は、医療機器の滅菌に不可欠なエチレンオキシド(EtO)が国家安全保障に直結するとの見方から、滅菌施設に対するEtO排出規制(有害大気汚染物質排出基準:NESHAPに基づく)の適用を延期するものである。具体的には、2024年に発効した環境保護庁(EPA)の関連規則について、実質的に遵守期限を2年間延長する。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
米国のエネルギー政策促進のため、特定の固定発生源に対し規制緩和を行う布告(7月17日)
この布告は、石炭火力発電が米国のエネルギー安全保障を下支えしていることから、石炭火力発電所に対する「水銀および大気有害物質基準(MATS)」の適用を延期するものである。具体的には、2024年に厳格化された環境保護庁(EPA)の当該基準について、実質的に遵守期限を2年間延長する。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
米国の化学物質製造における安全保障確保のため、特定の固定発生源に対し規制緩和を行う布告(7月17日)
この布告は、化学物質の製造があらゆる国内産業の基盤となっていることから、サプライチェーン維持のため、一部の化学物質製造施設に対する排出規制を一時的に緩和するものである。具体的には、2024年に発効した環境保護庁(EPA)の関連規則について、実質的に遵守期限を2年間延長する。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
米国の鉄鉱石処理における安全保障確保のため、特定の固定発生源に対し規制緩和を行う布告(7月17日)
この布告は、国内におけるタコナイト(低品位の鉄鉱石)の処理能力の向上によりサプライチェーンの強靭性を高めるため、タコナイト産業の固定発生源に対する排出規制を緩和するものである。具体的には、2024年に発効した環境保護庁(EPA)の関連規則について、実質的に遵守期限を2年間延長する。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
主治医から大統領に対するメモランダム(7月17日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領が「慢性静脈不全症」と診断されたことを記した主治医の文書全文を公開した。主治医は、同疾患を良性で一般的なものと位置づけ、その他の検査結果もすべて正常だったとした上で、大統領は良好な健康状態を維持していると結論づけた。(詳細はこちら)
トランプ大統領、「HALT フェンタニル法」に署名(7月16日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領の署名により「HALT フェンタニル法」が正式に発効したことを発表した。同法はフェンタニル関連物質を、米国物質規制法で最も厳しい「スケジュール1」(ヘロインやLSDなどと同等)に分類することで、取引や使用に対する厳しい行政・民事・刑事罰を課す。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
「トランプ大統領、AI分野における米国のリーダーシップを確立する」(7月15日)
ホワイトハウスは、7月15日にペンシルバニア州で開催された「Energy and Innovation Summit」において、トランプ大統領が数百億ドル規模の投資確保を発表したと報告した。投資はGoogleなど複数企業によるもので、AIデータセンター及び関連エネルギーインフラが対象。(詳細はこちら、投資元企業トップらのコメントはこちら)
「トランプ大統領、 MAHA推進を実現」(※MAHA: Make America Healthy Again・アメリカを再び健康にする)(7月14日)
トランプ大統領は、就任時に米国民の慢性的な健康危機に取り組むと約束したことに関連し、米国内のアイスクリーム会社の90%以上が人工着色料の使用を廃止する方針を示したことを紹介した。食品から有害な化学物質を排除する動きが進展していると強調している。(詳細はこちら)
トランプ氏暗殺未遂事件から1年:大統領からのメッセージ(7月13日)
トランプ大統領は、2024年7月13日にペンシルベニア州バトラーで発生した自身に対する暗殺未遂事件から1年を迎え、神の導きによって命が救われたことを強調し、アメリカの偉大さを取り戻す使命と国民の団結・勇気を称賛した。また、事件当日に家族を守って命を落とした消防士コリー・コンペラトーレ氏の犠牲を英雄的行動として讃え、現場で救助や支援にあたったすべての人々の功績に感謝を表した。(詳細はこちら)
「納税者が負担する給付金はアメリカ国民のためのものであり、不法移民のものではない」(7月13日)
ホワイトハウスは、2月19日の「納税者によるオープンボーダー(開かれた国境)への補助金の廃止に関する大統領令」に基づき、不法移民が公的給付を受給することを排除するための措置が開始されたことを公表した。(詳細はこちら)
「納税者が負担する給付金はアメリカ国民のためのものであり、不法移民のものではない」(7月10日)
ホワイトハウスは、2月19日の「納税者によるオープンボーダー(開かれた国境)への補助金の廃止に関する大統領令」に基づき、不法移民が公的給付を受給することを排除するための措置が開始されたことを公表した。(詳細はこちら)
「TRUST IN TRUMP(トランプを信じよ):経済成長で消費者センチメントは急上昇」(7月9日)
ホワイトハウスは、大統領経済諮問委員会の報告や報道の抜粋を引用して、市場のセンチメントが高まっていると強調した。その際株式市場の高値や、関税などが現時点では物価上昇などにそれほど影響していないこと、雇用や賃金の改善があることなどを主張した。(詳細はこちら)
「民主党員は、移民税関捜査局に対する凶悪で激化する攻撃を煽っている」(7月9日)
ホワイトハウスは、移民税関捜査局(ICE)職員に対する暴行が近年急増しており、7月初旬の複数の襲撃事件を挙げてその深刻さを強調した。また、多くの民主党の政治家が発したICEや移民取締への強い批判的発言が、こうした暴力を扇動・助長していると名指しで非難している。(詳細はこちら)
トランプ大統領、大阪万博出席のための大統領代表団派遣を発表(7月9日)
トランプ大統領は、派遣する大統領代表団が7月19日に大阪万博を訪れることを発表した。代表団はベッセント財務長官が率い、グラス駐日大使、デレマー労働長官、ランドー国務副長官、グレイソン米国館代表からなる。(詳細はこちら)