トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.34(2025年9月25日-10月1日)

大統領令一覧
AIの活用で小児がんの治療法を解明する大統領令(9月30日)
この大統領令は、政権の「アメリカを再び健康にする(MAHA)」政策とAIイノベーション推進政策の結節点として、米国で増加する小児がんに対しAI及び広範なデータの利活用で臨床研究・治療の変革を試みるものである。MAHA委員会は、科学技術政策担当補佐官(APST)とAI・暗号資産担当特別補佐官と連携し、小児がん分野におけるAIなどのイノベーション導入を進める。初期のアプローチとしては、2019年に設立された小児がんデータ・イニシアチブ(CCDI)を中心としてAI導入およびデータ分析の強化、連邦政府からの資金提供、先端技術を持つ民間部門の参入などを進めるほか、学術・民間とのデータの相互運用性を高める。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
カタールの安全保障を確保する大統領令(9月29日)
この大統領令は、カタールに対する武力攻撃を米国の平和と安全への脅威とみなし、武力攻撃の発生時には、米国が外交・経済・軍事を含むあらゆる手段で対応する方針を公式に表明したものである。(大統領令はこちら)
一部の連邦諮問委員会の存続に関する大統領令(9月29日)
この大統領令は、複数の連邦諮問委員会の存続を2027年9月30日まで延長するもの。ホワイトハウス保存委員会、HIV/AIDS大統領諮問委員会など幅広い諮問機関が対象であり、各委員会は所管する省庁の長によって管理される。(大統領令はこちら)
国家安全保障を確保した上でTikTokを救済する大統領令(9月25日)
この大統領令は、中国との枠組み合意で提示されたTikTok米国事業の売却計画が、執行が一時停止中のTikTok規制法における「適格分割」として認め、その売却における各種義務を規定するものである。事業運営を行う新たな合弁会社は、株式の過半数を米国の投資家が掌握し、米大手テック企業オラクルがセキュリティプロバイダとしてデータ・アルゴリズム管理を担う。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
「ガザ和平に向けたトランプ大統領の大胆なビジョンを受け、世界中が支持へ」(10月1日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領が発表したガザ和平案に対し、西側諸国だけでなくアラブ諸国などからも支持が集まっているとしてその重要性を強調した。具体的には、カタール・ヨルダン・UAE・インドネシア・パキスタン・トルコ・サウジアラビア・エジプトがトランプ大統領のリーダーシップを歓迎する共同声明を発したほか、日本やインドも含め幅広い国々が支持の姿勢をみせている。(詳細はこちら)
政府閉鎖の影響について(10月1日)
ホワイトハウスは、2025年10月1日からの政府閉鎖について民主党に責任を求めつつ、その影響を強調した。争点としては「Non-Citizens」や移民全般に対する社会保障の拡大を図る民主党の提案を特に挙げつつ、トランプ政権及び共和党としては駆け引きに応じないという姿勢を改めて露わにした。また政府閉鎖の影響に関するメディア報道を列挙し、公共サービス従事者や軍人の無給状態、施設停止などを強調した。加えて大統領経済諮問委員会(CEA)は、政府閉鎖がマクロ経済・雇用・社会保障・民間ビジネス等に及ぼす影響を挙げたレポートを公開し、閉鎖が長期化するほどその影響が増大すると主張している。(公式発表はこちらとこちら、関連記事はこちら、CEAレポートはこちら)
「世論調査:大多数のアメリカ国民は急進左派民主党による政府閉鎖に否定的」(9月30日)
ホワイトハウスは、ニューヨーク・タイムズ紙が行った世論調査において、民主党が政府閉鎖に進むことに対し否定的な反応が相対的に多かったことを挙げ、改めて民主党とその支持基盤を批判した。世論調査では民主党支持者において概ね賛否両論があるのに対し、共和党支持者では圧倒的多数が政府閉鎖に否定的であり、無党派層でも否定的な声が多いことから、全体としては政府閉鎖に反対する声が大きい様相となっている。(詳細はこちら)
ファクトシート:トランプ大統領、米国の患者たちに最恵国待遇を確保する初の合意について発表(9月30日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領が米製薬大手ファイザー社と合意を結び、今後同社製医薬品の米国価格が他先進国の中で最も低い「最恵国待遇(MFN)価格」に設定されることを公表した。これにより、全てのメディケイドプログラムはファイザー製品をMFN価格で活用できるほか、米国の患者に対する直接販売においてはさらなる割引が適用されるようになる。(詳細はこちら)
米国向け木材・製材およびその派生製品の輸入調整に関する布告(9月29日)
この布告は、米国の国家安全保障への脅威を軽減するため、木材関連の輸入品に段階的な関税を課すことを命じるものである。具体的には、2025年10月14日より、軟木材や製材には10%、布張りの木製製品には25%、キッチンキャビネットや洗面台には25%の関税が課される。2026年1月1日からは関税がさらに引き上げられ、布張り木製製品は30%、キッチンキャビネットや洗面台は50%となる。ただし、すでに関税交渉を終えた英国・EU・日本に対する関税には上限が設定され、英国は10%、EU・日本は15%を超えない。また、新たに米国との交渉が妥結された場合、2026年1月からの関税引き上げは適用除外となる。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
聖ミカエル祭に寄せる大統領メッセージ(9月29日)
ホワイトハウスは、大天使聖ミカエルの祝日を迎えるにあたり、米国および世界のキリスト教徒に敬意を表するメッセージを発表した。(詳細はこちら)
「環境諮問委員会(CEQ)、国家環境政策法(NEPA)審査の効率化に向けた指針を発表」(9月29日)
ホワイトハウス環境諮問委員会(CEQ)は、国家環境政策法(NEPA)の実施指針を改訂し、連邦機関が環境審査や許認可手続きを迅速に進められるよう、手続きのひな形を公表した。これにより、大型インフラ事業の手続きを迅速化する狙いがある。この取り組みは、2025年1月20日に発出された「アメリカのエネルギーを解放する大統領令」の一貫であり、同年6月30日には一部の連邦機関が自らのNEPA実施指針を更新していた。(詳細はこちら)
「全米狩猟・釣りの日」(9月27日)
ホワイトハウスは、「全米狩猟・釣りの日」にあたり、狩猟や釣りを通じて米国の伝統を守ってきた国民を称賛し、次世代に自然の美しさを引き継ぐ決意を示した。(詳細はこちら)
リサーチ:市場での補償拡大、手頃な値段、アクセスの改善に向けたOBBB法によるHSA適格範囲の拡大(9月26日)
ホワイトハウスは、トランプ政権が成立させた予算調整措置法「One Big Beautiful Bill」による制度拡大により、2026年から新たに300万人が医療貯蓄口座(HSA・Health Savings Account)の対象となり、利用可能者が1000万人規模に拡大する見通しだと発表した。(詳細はこちら)
「薬物取締政策局(ONDCP)、大統領令の遵守確保のため、薬物のない地域社会(DFC)助成金を再公募へ」(9月26日)
ホワイトハウス薬物取締政策局(ONDCP)は、大統領令の遵守を徹底するため、2025年薬物のない地域社会(DFC)支援プログラムの助成金を再公募すると発表した。当助成金は、全米の薬物乱用防止活動に取り組む青少年団体に毎年交付されている。ONDCPは、資金が急進的な左派の活動に流れないよう監督するとした。(詳細はこちら)
「連邦調達政策局と中小企業庁、連邦契約における中小企業の参画を強化」(9月26日)
ホワイトハウス連邦調達政策局は、中小企業庁と協議のうえ、中小企業の連邦契約参入を促進するための簡素化された規制を発表した。今回の改革は、「画期的な連邦調達規則改革(RFO)」の一貫であり、特に米国の経済活動の40%を担う中小企業の参入拡大を狙いとしたものである。具体的な改定内容には、規制要件の削減や登録制度の改善などが含まれ、今後はパブリックコメントの募集も予定されている。(詳細はこちら、「画期的な連邦調達規則改革(RFO)」についてはこちら)
最も凶悪な犯罪を抑止し罰するため、コロンビア特別区において死刑法を施行する覚書(9月26日)
この覚書は、連邦法において重大な犯罪で有罪となった被告に対し規定される死刑について、コロンビア特別区での確実な運用を求めるものである。具体的には、コロンビア特別区連邦検事に対して、明確な証拠や情報に基づいて死刑の正当化が可能な場合は求刑を行うように指示し、死刑相当の犯罪については司法長官とともに連邦政府の法的管轄権を最大限行使するよう求めている。またこの指示は死刑制度を復活させた1月の大統領令、コロンビア特別区に緊急事態を宣言する8月の大統領令に続く継続的な取り組みであることが強調されている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
国内テロと組織的政治暴力への対応を命じる覚書(9月25日)
この国家安全保障大統領覚書(NSPM-7)は、近年の暗殺・暴力・暴動事件が組織的なものであると位置づけFBIの統合テロ対策タスクフォース(JTTF)に対して、政治的暴力等に関する捜査・訴追を強化させる。また、司法長官はこうした政治的暴力に関わる犯罪全てに起訴措置を執り、捜査の過程で関与が判明した団体に対しては「国内テロ組織」の指定勧告を行うなど、国内テロや組織的政治暴力への包括的な国家戦略を定めている。(詳細はこちら、ファクトシートはこちら)
2025年ゴールドスター・マザーズアンドファミリーズ・デーの布告(9月25日)
この布告は、従軍中に殉職した軍人を偲び、その遺族に敬意を表すため、1936 年の上院合同決議の規定に則って2025年9月28日をゴールドスター・マザーズアンドファミリーズ・デーとするものである。また、トランプ大統領は2021年のアフガニスタン撤退時に殉職した兵士らの遺族との面会を取り上げ、遺族らへの支援と「力による平和」の達成に向けた姿勢を改めて強調した。(詳細はこちら)
「力強い消費・貿易赤字の縮小がトランプ経済の爆発的成長を牽引」(9月25日)
ホワイトハウスは、第二四半期のGDP成長率が3.8%に上方修正されたことを受け、経済回復の力強さを強調した。成長の背景には、貿易赤字の縮小や堅調な消費支出、賃金上昇に加え、実質可処分所得の増加があるとした。さらに、耐久財需要や工場生産の拡大、中小企業の信頼感の高まりなどを挙げ、成長が民間主導で進んでいると説明した。(詳細はこちら)