トランプ政権トラッカー:大統領令の概要と解説 No.38(2025年12月10日-12月16日)

大統領令一覧
フェンタニルを大量破壊兵器として指定する大統領令(12月15日)
この大統領令は、合成麻薬「フェンタニル」とその前駆体を大量破壊兵器に指定するものである。違法なフェンタニルの過剰摂取によって多くの米国民が命を落としている現状を踏まえ、同物質は「麻薬というより化学兵器に近い」と指摘している。さらに、司法長官に対してフェンタニル密売に関する捜査の強化を命じるとともに、国務長官や財務長官などに対してはフェンタニルの製造・密輸・流通に関与する資産や金融機関等に対する制裁措置の強化を求めている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
外資系または政治的動機を持つ株主議決権代理アドバイザーから、米国の投資家を保護する大統領令(12月11日)
この大統領令は、株主の議決権行使を助言・支援する「代理アドバイザー」市場の約9割を占めるInstitutional Shareholder Services(ISS)およびGlass Lewisについて、投資家利益よりもDEIやESGといった政治的要素を重視しているとして問題視し、是正措置を講じるものである。証券取引委員会委員長には、代理アドバイザーに関する規制や指針を再検討し、DEI・ESG要素の見直しや各種義務付け・調査を行うことを命じた。さらに、連邦取引委員会委員長には独占禁止法違反や反競争的慣行の調査を、労働長官にはERISAの受託者規則を見直し、代理アドバイザーが関与する場合に受益者の利益が最優先されるよう確保することを求めている。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
AIの国家政策枠組みを確保するための大統領令(12月11日)
この大統領令は、AIへの規制が州ごとに異なる状況を是正し、イノベーションへの障壁を最小化するため、連邦政府レベルでの統一的な枠組みの適用を目指すものである。具体的には、商務長官を中心に各州のAI関連法を精査し、連邦政府方針に相反したり過度な負担となる規制については、新設の「AI訴訟タスクフォース」を通じて法的な異議申し立てを行うほか、補助金の停止措置などをとることが命じられた。また、州法がAIモデルに対して特定の価値観や方針を埋め込む場合などにおける連邦法への抵触有無の検討が指示されるほか、さらには連邦政府レベルでの統一的なAI政策枠組みを策定するための立法勧告を作成する。(大統領令はこちら、ファクトシートはこちら)
布告・覚書・公式発表一覧
米国の安全保障を確保するため、外国人の入国を規制・制限する布告(12月16日)
この布告は、特定国からの入国を制限した6月4日の布告に引き続き、措置の継続及び拡大を行うものである。具体的には、6月布告で特定された12カ国に加え、ブルキナファソ、マリ、ニジェール、南スーダン、シリアの新規5カ国及びパレスチナ、さらに6月時点では部分的制限対象であったラオス、シエラレオネが入国の全面的制限対象となった。部分的制限対象としては6月に引き続くブルンジ、キューバ、トーゴ、ベネズエラに加え、新規でアンゴラ、アンティグア・バーブーダ、ベナン、コートジボワール、ドミニカ国、ガボン、ガンビア、マラウイ、モーリタニア、ナイジェリア、セネガル、タンザニア、トンガ、ザンビア、ジンバブエの15カ国が追加された。なお、(6月時点で部分的制限対象であった)トルクメニスタンのみは、米国との協力実績により移住以外の入国は制限解除となった。引き続き永住者や特定のビザ保持者等については例外が認められる場合もあるほか、ファクトシートでは各国に対する停止措置の事由がそれぞれ掲載されている。(詳細はこちら、関連記事はこちら)
トランプの歴史的な国境勝利:開かれた国境から完全統制へ(12月15日)
ホワイトハウスは、南部国境の防衛と米国の主権擁護に顕著な功績を挙げた米軍関係者に対し、新設された「メキシコ国境防衛勲章」を授与することを発表した。あわせて、不法滞在者250万人超を国外退去させたことなど、トランプ政権下における国境政策の成果を強調している。(詳細はこちら)
議会提出法案H.R. 452, H.R. 970, H.R. 983, H.R. 1912 およびS.616が成立(12月12日)
ホワイトハウスは、合計五つの議会提出法案が法律として成立したと発表した。H.R. 452は、1980年の米国男子アイスホッケー代表チームに対して議会金メダルを授与するもの、H.R. 970は軍人およびその家族を対象とする保険制度について定期的な見直しを指示するもの、H.R. 983は予備役軍人に対する授業料を調整するもの、H.R. 1912は不正に使用された退役軍人給付金の返還に関するもの、S.616はFederal Bar Associationの連邦チャーター改正に関するものである。(詳細はこちら)
下院共同決議第104, 105, 106, 130及び131号が連邦法として成立(12月11日)
下院共同決議第104, 105, 106, 130, 131号が、大統領の署名により連邦法として成立した。これらの法案は、モンタナ州マイルズシティ(104)・ノースダコタ州(105)・アラスカ州中央ユーコン(106)・ワイオミング州バッファロー(130)・アラスカ北極圏国立野生生物保護区沿岸平野部(131)のそれぞれにおいて、石炭リースや石油・ガス開発の規制、環境保護措置を命じた既存の規則を無効とするものである。(詳細はこちら)
「トランプ関税は効果がある:貿易赤字は5年ぶりのレベルに縮小」(12月11日)
ホワイトハウスは、貿易赤字が2020年以来最低額に縮小したことを公表し、政権の「アメリカ第一」貿易政策の効果を強調した。輸出額は過去最も高い水準に近く、対中貿易赤字(季節調整後)は2009年以来2番目に低い結果となった。(詳細はこちら)
「ホワイトハウス、教育者や保護者らとともに『AI教育タスクフォース』の第三回会議を開催」(12月11日)
ホワイトハウスは、4月23日の「アメリカの若者に対するAI教育の推進を命じる大統領令」で発足した「ホワイトハウスAI教育タスクフォース」の第三回会議を開催し、行政・教育・保護者間の意見交換を行ったことを公表した。また8月に開始した「大統領AIチャレンジ」には、全米で学生・教育者合わせすでに数千人の登録者が集まっていることも明かされた。(詳細はこちら、AIタスクフォースについてはこちら)
「トランプ大統領、ペンシルベニアにて:アメリカ・イズ・バック-それはまだ始まったばかりだ」(12月10日)
ホワイトハウスは、トランプ大統領がペンシルベニアで開催した集会の様子を公開した。トランプ大統領は、6万人相当の雇用創出や約1,000億ドルの投資確保といった政権による州への還元を強調したほか、減税やインフレ対策、移民政策など国家レベルで成果が進んでいると訴えた。(詳細はこちら)











