アイルランド総選挙 | 選挙イヤー2024

11月29日にアイルランド下院選挙(定数174)が実施され、サイモン・ハリス首相率いる統一アイルランド党(フィネ・ゲール、中道右派)は3議席増の38議席を獲得した。ハリス首相は、情報セキュリティー上のリスクを認識しつつも、若者へのアプローチとしてTikTokを積極的に活用しており、「TikTok宰相」という異名を持つ。2024年3月にハリス氏が首相に就任したことで、一時的に統一アイルランド党の支持率は回復し、議席を増やすことには成功したものの、期待していたほどの勢いは得られなかった。他方、同党と連立を組む共和党(フィアナ・フォイル、中道右派)は10議席増の48議席を獲得し、第一党を維持するとともに党勢を大幅に拡大した。連立協定により約束された首相交代までの間の2年半(2020年~2022年)にわたり首相を務めたミホル・マーティン副首相は、ハリス首相が「息切れ」することを予想し、地味ではあるが頼りになるリーダー像を作り上げたとされており、この選挙戦略が功を奏したといえる。ただし、連立与党全体としては、緑の党(改選前12議席)が大幅に議席を減らし、1議席のみの獲得にとどまったため、過半数にはわずかに及ばない結果となった。最大野党でナショナリスト政党のシン・フェイン(改選前37議席)は、度重なるスキャンダルや一貫性に欠ける移民政策が影響し、今回の選挙では得票率を減少させる結果となったが2議席増の39議席を獲得した。今後は、共和党と統一アイルランド党を中心とした連立政権が少数与党となり、小規模政党や無所属議員からの支持を得る形で政権運営を模索するとみられるが、生活費や住宅価格の高騰といった課題が続く中で、与党への逆風が比較的小さかった点は注目に値する。
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石川 雄介 研究員/デジタル・コミュニケーション・オフィサー
専門はハンガリーを中心とした欧州比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。 トランスペアレンシー・インターナショナル ハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所にて、インターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)を経た後、2024年8月より現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。 主な著作に『偽情報と民主主義:連動する危機と罠』(共著、地経学研究所、2024年)、『EU百科事典』(分担執筆、丸善出版、2024年)、Routledge Handbook of Anti-Corruption Research and Practice(分担執筆、Routledge、2025年出版予定)などがある。 【兼職】 国際NGO Transparency International Anti-Corruption Helpdesk (ベルリン)外部寄稿者・コンサルタント
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研究者プロフィール
石川 雄介

研究員,
デジタル・コミュニケーション・オフィサー

専門はハンガリーを中心とした欧州比較政治、民主主義の後退、反汚職対策。明治大学政治経済学部卒業、英国・サセックス大学大学院修士課程修了(汚職とガバナンス専攻)、ハンガリー・中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。 トランスペアレンシー・インターナショナル ハンガリー支部でのリサーチインターンなどを経て、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)に参画。API/地経学研究所にて、インターン、リサーチ・アシスタント、欧米グループ研究員補(リサーチ・アソシエイト)を経た後、2024年8月より現職。APIでは、福島10年検証、CPTPP、検証安倍政権プロジェクトに携わった。シンクタンクのデジタルアウトリーチ推進担当として、財団ウェブサイトや SNSの活用にかかる企画立案・運営に関わる業務も担当。 主な著作に『偽情報と民主主義:連動する危機と罠』(共著、地経学研究所、2024年)、『EU百科事典』(分担執筆、丸善出版、2024年)、Routledge Handbook of Anti-Corruption Research and Practice(分担執筆、Routledge、2025年出版予定)などがある。 【兼職】 国際NGO Transparency International Anti-Corruption Helpdesk (ベルリン)外部寄稿者・コンサルタント

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